翻刻
此|候(こう)には日(ひ)暖(あたゝ)かにして、草木(さうもく)芽(め)を生(せう)じ、花(はな)を発(はつ)し、
果(み)を結(むす)び、また忽(たちま)ちに凋枯(てうこ)す、種殖(しゆしよく)の功(こう)を終(をふ)る僅(わづか)
に六週日(ろくしゆうじつ)の間(あいだ)にあり、〇北極(ほつきよく)の地方(ちはう)温帯(おんたい)付近(ふきん)の
処(ところ)は、谿谷(けいこく)の間(あいだ)大麦(おほむぎ)、燕麦(からすむぎ)を生(せう)ず、北緯(ほくい)七十五|度(と)の
地(ち)に至(いた)つて初(はじ)めて耕種(こうしゆ)の業(げう)を廃(はい)するに至(いた)る、し
かるに南半球(なんはんきう)に於ては、巳(すで)に五十九|度(ど)に至(いた)れば
草木(さうもく)既(すで)に跡(あと)をとゞめず、〇植物(しよくぶつ)は斯(かく)の如(ごと)く気候(きこう)
に従(したが)ひて定処(ていしよ)ある外(ほか)に、別(べつ)に地(ち)に従(したが)ひて種(たね)を異(こと)
にする事あり、即(すなは)ちオーストラリアの植物(しよくぶつ)は自(おのづか)
ら其地(ち)に所(ところ)を定(さだ)むるがごときものあり、また南(みなみ)ア
メリカの植物(しよくぶつ)は、北アメリカの植物(しよくぶつ)に異(こと)なるも
のあり、新(しん)ゼーランドの植物(しよくふつ)は大ブリテンの植(しよく)
物(ふつ)に同(おな)じからざるあり、
地(ち)の高度(こうと)に従(したか)ひて植物(しよくふつ)の各異(かくゐ)、
地(ち)の高度(こうど)に随(したが)ひて植物(しょくふつ)の各異(かくゐ)なる事は、正(まさ)しく
緯度(ゐと)に随(したが)ひて、其|各異(かくゐ)あるの帙序(ついで)に同(おな)じ、故(ゆゑ)に二(じ)
至(し)線中(せんちう)の高山(こうざん)を見(み)るに、その山下(さんか)は椰樹(やじゅ)繁茂(はんも)し
て、中間(ちうかん)は槲樹(かしは)、槻樹(けやき)、樅樹(もみ)等あり、其|頂(いたゞき)に近(ちか)ければ