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コレクション: STAGE8

地震記 下 - 翻刻

地震記 下 - ページ 21

ページ: 21

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 なく笑難顕然と心二懸り不便に存ゟ慮境へ逃寄預り声  を懸尋といへとも一人も相見へ不申様子相分不申弥増不審二存  一身を宰早々立出ㇽ存念は山々なれども無拠難悪畠に油断  いたしのみならす飛石の危事に憶しの魂を失ひ懸畠に  突居り御用家を見申処灯燈の大風二ゆらる如く出入之  道は崩石二而畾地も狭く門に出んとすれとも石崩れ道を塞  いかんともすへき様なく仕合なるは去冬御用家建替にて梁行  別而丈夫にて先捻ㇾなから倒れすはかり建具戸袋なと悉く  外れ夫ゟ刀を取出し身一ッ二而門外へ欠出海之見合候処湊内二  懸り居候数十艘之漁船市艇示來目通りに見受候船市艇  之瓦遥見上る程に成海ふくれり山に見へ扨又沖嶋之近辺二  当り海上ゟ真黒き雲と片面は火炎の焼る様にはと雲との    気立上り実に二タ目とは見られす恐敷気過とも何かもて  申様なく早くも津波に押潰さる事のみ恐れ御用物の事  心元なくおもへとも当時御銀は少しも無之拾四五俵の御米  心には懸りなから所詮彼是する猶予は有ましくと見付の  山の手を心さし片息にて欠走り山際迄壱丁餘の所平  日壱里も歩行ほどにてもとかしくおもひ其上通路の家は  灯燈を提ことく扨又当浦は常に風烈く土地ゆへ板屋根に  大石を横たれは棟の石崩落肩に当り通人も有之立置  有之木竹魚桶の類道を遮り此上火災の程も心に懸り水  大地震一時の責実に修羅道の街もかくやあらんと思やられ  何の頓着もなく唯十方にくれ其内爰にある女童の泣  叫声耳に響き其有様譬るにものなく今はとても遁れぬ