翻刻
大難と命懸の道偏に神仏の御加護にて先其難を凌
山上迄登り漸一息遣継地震少しなりし後船中に居る者
上り来り咄承申候処海上にて見及申処騒動中三度斗山ノ
如き浪押入そりや見よ柏嶋浦人ともは残らす押流したりと
見候処勿体なくも稲荷宮の安子木の枝一様にゆるき地を
撫る歟と見れは波退き右之危難同様に三度に及ひ申と聞
畢竟氏神の御助にて無別条一番に危キ離ㇾ嶋世間にも既に
震潰と申沙汰有之を以中村へ届に遣し候節無事之の事孰も
怪しみ申候様子使の者帰り咄二而往々浦中老幼二至迄壱人も
実なる怪我迄無之家は悉く半潰れ一番丈夫なる家も柱
なと折ㇾ潮は立追候後押入門口脚位立申哉乍去西北寺の
近辺は幅五六寸斗地割ㇾ汐を吹出し山は南ノ方頻に崩れ土
煙雲のことく絶間なく終日崩見合候処海端小山のことくに
相成離嶋の事なから白鳳年中ゟ開ヶ頼母敷見込候山も端に々
崩れ被減しに相成すへき様なくひたすら後難之程を恐れ
いつれも神願は申に及はす神職も丹誠を抽地下人一同髪
切る立願手を尽し出家秘術を尽し此上の処は力に不及
と皆振ひ杲粥をすゝり飢を凌斗の事にて難儀筆に尽し
かたく同時ゟ翌ゝ七日四ッ頃迄震動たへまなく五日の夜
凡三十度程は数へ候へとも後には数も知れ不申候時々鳴動西
方角に当り百目程の筒音の様に鳴るや否地震は付ヶ合二而
夫ゟ少々雨に相成是まて鳴り降静り申事と存込のみならす
大分震も間遠く雨の凌も俄に難整旁以一同下り荷物
なと我きみに運ひ達方の事も有之一応地中も見聞に