翻刻
還漂流する者也如此言へは学者一箇の私説也と笑ひ
譏るへけれと漢国にも推歩測量して天の運行を論
するに今吾説に似たる事あり天文志曰天は覆盆に似
たり中高して四辺下る日近ふして見るを昼とし遠して
見へさるを夜とす渾天説曰天の象は鳥卵に似たり地其
中に居て天は地の外を包て猶卵の裏黄なる如し天半
地を覆ひ半地下に在云々是漢の説也日月運行昼夜
の事は大古論に在斯に畧す夫地震は大海を渡る船の
風波に遭か如し元来浮たる世界の地ならは気候不順の
時無事能はす現在諸人見る所の俗所謂時化と唱ふ
者殿閣を倒し大樹を抜大船を破損す顕て発し其害を
為す者風雨の然らしむる事誰も知れり故に異変を称
せす地震は陰蔵して発する故興起の本を知らす其地
震は世界の地気漸々閉て地下に聚り山枯海乾て河
川添潮竭て泉水乏く懐中細波頻々鳥翼を収て飛
す鴉風を呼て鳴事繁し地下に倚畳せる気一度切れて
発散動揺す其載する所の地悉く震ふ水気山野海
岸に溢て浩水山に昇り郊野を冒す黄泉交る故生草
枯害ふ宇宙の気滞結し積貯て一度に発す故に百年
の後此変あり其地脈の継く者或一丁より十里又は百