翻刻
【右頁「いせこよみ」翻刻省略】
塊記享保九年の御話に云くむかし四方市といふ盲人は名 誉
の調子聞にて人の吉凶悔吝を占ふに少しも違ふことなし応山へは
御心安く毎々参りて御次に伺候せし に晩年に及ひて申せしは
由なきこと覚えて甚くやし終日人に交はる毎に其人の吉凶
みな耳にひゞきていとかしましと申ける由去ほどに度々の高名
挙てかぞへかたし此四方市朝夙に起て僕を呼ひ扨々あしき
調子なり此調子にては大方京中は滅却すべきぞ急ぎ命にても
認めて我を先嵯峨の方へ誘ひ行けと云日頃の手際どもあれは
早速西をさして嵯峨に行嵐山の麓大井河原に着て暫
く休息して云様いまだ調子直らずあないふかし大かた大火事