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コレクション: STAGE1

安政乙卯江戸大地震筆記 安政丙辰八月大阪大雷雨之記追加 安政三辰年七月松前辺大地震并八月大風雨記録 - 翻刻

安政乙卯江戸大地震筆記 安政丙辰八月大阪大雷雨之記追加 安政三辰年七月松前辺大地震并八月大風雨記録 - ページ 45

ページ: 45

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 物語の多ケれと繁き故に爰にハ略セり 見聞録 一この地震の時余か知己なる山中何某といへる人遊歴して駿河に居れりこの国ハ海道  ニても別て地震の厳しと聞りその日巳刻ころ中山氏外の方に立出て人と物語なし  居ケるかすハ地震よといふ間もあらす両足なへてはたと倒れ起上らんとなしケれともかの  小児の戯れにすなる俵ころかしといふに斉しくてたゝころ〳〵として立事難し其  時泥中より烟のことく砂の如き物吹出て満面を打るゝほとに目口たに開得す心昏迷して  前後もしらす暫くして揺りしつまり漸心地われに帰り起上りて四辺を見るに家皆  斉しく崩れ倒れて在りしさまにハ似もつかす四方に人の陰聲聞えてこハ生なから  叫喚地獄へ堕し物かとあやまたれ心を静めて篤と見るに我家も崩るゝのミか  三人斗り地中へ陥り衣類調度も何方にあるか屋根壁崩れて覆ぬれハ頓に出さん  やうもなく只管にあきれ惑ふ一圓如此なれハ一夕の米もなくこれを炊かん器さへ  ミな地中に埋れていかにも為方なし殊に此辺の井ミな崩れたりよし崩れさるモ  泥吹入てさらに飲へき様もなケれハ人〻飲食を断にケり《割書:思ふニ東都の地震【挿入:はけしケれとも】いかばかりの事ハあらす怪我人の|他邦より夥しきハ土地に人の多きかゆゑのミ》  かくて其翌日に至り邑の荘屋諸方を募り漸にして米を得つ粥に煮て施し  たれは始て咽を潤セりこの中山氏もその翌日粥をすゝりしは未刻也とそ  この以後府に居たりケる予か親族の僕由蔵なる者此地震の事を語りしを聞にすハ  地震といふ程かそあれ蔀格子もたちまちにめり〳〵と破れ摧け戸障子倒れ掾先のつケ柱  一時に倒れて外に出んとすれと足もたゝす漸にして轉出し頻に震ふる事烈しケれは  傍にある大木のやがて一抱もあらんとするに抱付しにその大木の《ルビ:幹|ミき》大に揺るによりて  手をはなたるゝ事凡そ三度亘なる哉この大木ゆれて伏す時は枝地上につき仰く時ハ  半天に至る故に過てこの幹に打るれハ身躰微塵に成そケりその危さたとふるに  物なし然るに高運にしてその恙なき事を得たり直に地に轉ひし者はさらに起上る  事叶ハす其時大地大に裂て淤泥砂を吹出セは遍身泥にまミれて面目を分たす震  やミて漸に起上るといふといひともたゝ目くるめきて行歩叶ハす大に酔る人のことし