東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト8

桜品 - 翻刻

桜品 - ページ 35

ページ: 35

翻刻

【右丁】 して本(もと)より佐久良(さくら)にあらざる事をしらず 桜名(あふめい)日本 私(わたくし)に名付(なづく)る所(ところ)にして中華(ちうくは)の 桜にあらざる也 世人(せじん)日本にいへる所(ところ)の桜は 諸越(もろこし)にある事(こと)分明(ふんめう)ならずといへども左(さ)に あらず全(まつたく)有事(あること)明(あきらか)也 携(すい)李仲遵(りちうじゆん)王路(わうろ)が 花史(くはしに)曰 沈立海棠記(ちんりうがいどうのき)に江-浙 ̄ノ間又有一-種 柔-枝長-蒂顔-色浅-紅垂 ̄レテ_レ英 ̄ヲ向 ̄フ_レ 下 ̄ニ謂 ̄フ_二之 ̄ヲ 【左丁】 垂-糸海棠 ̄ト_一又 祝穆(しゆくぼく)が事文類聚(じもんるいじゆ)に   垂糸海棠      梅聖喩  要 ̄ス_二使_レ呉 ̄ヲ同_レ蜀 ̄ニ須 ̄ク_レ看 ̄ル線-海棠 ̄ヲ臙-脂色   欲 ̄ス_レ滴 ̄ント紫-蝋蒂何 ̄ソ長夜-雨偏 ̄ク宜_レ著春  風一 任(アレ)狂 ̄スルヿ当-時杜子美吟徧 ̄シテ独 ̄リ相  忘 ̄レ

現代語訳

【右丁】 して本来桜(さくら)ではないことを知らない。桜名は日本が独自に名付けたものであって、中国の桜ではない。世人は「日本で言う桜は中国にあるかどうか明らかではない」と言うが、そうではない。完全に存在することは明らかである。李仲遵・王路の『花史』に曰く、沈立の『海棠記』に「江浙の間にまた一種あり、枝は柔らかく蒂は長く、顔色は浅紅で、花を垂れて下に向かう。これを 【左丁】 垂糸海棠という」とある。また祝穆の『事文類聚』に 垂糸海棠      梅聖喩 呉と蜀を同じくするには、必ず線海棠を見るべきである。臙脂色で滴らんと欲し、紫蝋の蒂は何と長いことか。夜雨は偏に春風に宜しく、一任して狂わせる。当時杜子美は吟じ尽くしたが、独り相い忘れた