翻刻
青(あを)き所以(ゆゑん)のものは、洋水(やうすい)は日光(につくわう)の七色(しちしょく)を接(せつ)して、
只(たゞ)青光(せいくわう)を返照(へんせう)し他色(たしょく)は悉(こと〴〵)く之を吸収(きうしう)すればな
り、しかれども地(ち)に随(したが)ひて水色(すいしょく)の異同(ゐどう)あり、みな
その然(しか)る所以(ゆえん)の理(り)あるによるものにて、地中海(ちゝうかい)
の東方(とうはう)は紫色(むらさき)なり、ゴイ子ヤの湾(わん)は白色(はくしょく)なり、ア
ベールの西方(せいはう)は緑色(りよくしょく)なり、レプラタの河口(かこう)にて
は紅色(こうしょく)を帯(お)ぶ、カリホルニヤの近傍(きんはう)にては其|色(いろ)
朱(しゅ)に似(に)たり、皇国(くわうこく)と支那(しな)の間(あいだ)は其|色(いろ)黄(き)なり、
マルダイウ島(とう)の周囲(めぐり)にては黒色(こくしょく)を顕(あらは)し、紅海(こうかい)に
於ては紅色(こうしょく)にして、其|地名(ちめい)こゝに起原(きげん)す、抑々(そも〳〵)此(この)
海水(かいすい)の紅色(こうしょく)を顕(あらは)すは、オスシラリヤと号する植(しょく)
虫(ちう)の一類(いちるい)夥(おびたゞ)しく聚合(しやうかう)するに帰(き)す、其|他(た)海水(かいすい)の色(いろ)
各種(かくしゅ)なるは、皆(みな)其|水面(すいめん)若(もし)くは水面(すいめん)に近(ちか)く生長(せいちやう)す
る海草(かいさう)、或(あるひ)は水中(すいちう)に聚合(しやうがう)する小虫、また水中(すいちう)に含(ふく)
める物質(ぶつしつ)の分子(ぶんし)に径(かゝ)るものとす、
洋水(やうすい)の鹹味(かんび)、
凡(およ)そ洋水(やうすい)皆(みな)鹹味(かんび)ありといへども、所(ところ)に随(したが)ひて濃(じよう)
淡(たん)あり、大河(だいか)の近傍(きんばう)或(あるひ)は極地(きょくち)に在(あり)ては、河水(かすい)或(あるい)は