翻刻
白岩(しろいわ)の如(こと)きものにして湯水(ゆみつ)に浸(ひた)れは忽(たちま)ち和(やわ)
らかになりて能(よ)く汚垢(あか)を落(おと)す世(よ)に云(い)ふ洗粉(あらひこ)
なり是(こ)れ亜尓加里(アルカリ)の主分(しゆふん)を含(ふく)む者(もの)なるべし
能(よ)く婦人(ふじん)髪(かみ)を洗(あら)ひ洗濯(せんたく)もの都(すべ)て何品(なにしな)にても
油気(あふらき)を染(そま)せたるを落(おと)すの効寄(こうき)妙(めう)なり
○菌類(きのこるい)
松茸(まつたけ) 椎茸(しゐたけ) 香茸(こうたけ) 雚菌(しめぢ) 葦茸(よしたけ) まい茸(たけ)
○木地物(きちもの)
酒器類(さけのどうぐ) 瓢単巵(ひさご) 弁当(べんたう) 丸重器(まるかさね) 蓋物(ふたもの)
茶壷(ちやつぼ) 煙草入(たばこいれ) 燭台(しよくだい) 小児(ことも)の玩弄(をもちや)物(もの)いろ〳〵
詩歌(しか)
各国(かくこく)の雅人(がじん)此(ここ)所に遊(あそ)んで詩歌(しか)の吟詠(ぎんえい)数(かず)多(おほ)し然(しか)
れとも一々《ルビ:枚挙|まいきよ》する能(あた)はずと雖(いへ)とも其あらま
しを載(のせ)て浴治(よくぢ)雅客(がきやく)の看官(かんくわん)に供(きやう)す
仙台太守(せんだいのたいしゆ)六世(ろくせ)従(じう)《ルビ:四位上左中将|しゐじやうさちうせう》兼(けん)伊達(だて)陸奥(むつの)
守(かみ)吉村公(よしむらこう)此(この)温泉(をんせん)に入浴(にうよく)し給(たま)ひて病(やまい)愈(い)ゆ依(よ)
りて地主(ちぬし)神(かみ)薬師(やくし)瑠璃殿(るりてん)の宝前(ほうぜん)へ歌(うた)を詠(えう)し
賜(たま)ひ随徒(ずいと)の臣(しん)をして南無(なむ)薬師(やくし)瑠璃光(るりこう)如来(によらい)
の仮名(かな)を分(わか)ち一首(いつしゆ)に冠(かむ)らせ奉納(はうのう)し賜(たま)ふ