翻刻
坂(さか)ノ下(した)と云(い)ふ所(ところ)より新道(しんだう)と旧道(きうだう)との分(わか)れあり旧
道を上(のぼ)りて追分(おひわけ)あり右は鎌先左は羽前道(うせんみち)にし
て川原子(かわらこ)を経(へ)て七(しち)ヶ宿村(しゆくむら)へ通(つう)じ字(あざ)関駅(せきえき)へ五里
余あるなり
〇一等道路白石町と宮村との間(あいだ)に子捨川(こすてかわ)と云(い)
ふ所(ところ)あり西(にし)の方(はう)にて橋際(はしきわ)なる茶屋(ちゃや)の傍(かたわら)に有(ある)は
鎌先道追分なり該碑(がいひ)は元禄五壬申年六月白石
阿古箇嶋八重治氏の竒附建設(きふけんせつ)なるも源(みなもと)義経公(よしつねこう)
の臣(しん)常陸坊(ひたちほう)海尊(かいそん)の霊神(れいじん)同氏(どうじ)に屡々(しば〳〵)在宿(ざいしゆく)ありた
る時(とき)の真筆(しんひつ)なりと云ふ
〇温泉(おんせん)沸(わ)き出(いづ)る地(ち)は大概(おほむね)深山幽谷(しんさんゆうこく)の溪流(けいりう)に沿(そ)
ふて景地(けいち)蕭幽(せいゆう)の地(ち)に多(おほ)し爰(こゝ)は頗(すこぶ)る僻地(へきち)閑寂(かんせき)の
山家(やまが)と言(い)へとも温泉の為(ため)に旅舎(はたごや)四軒(しけん)あり各目
印【屋号紋:丸型に長?see https://sl1nk.com/ct6cmu4 p10】温泉(ゆぬし)主、一条一平、【屋号紋:山型に二】村山卯平、【屋号紋:丸型に一】鈴木幸
右衛門【屋号紋:曲金にキ】木村源八等、四戸なり四面(しめん)群山(ぐんさん)に囲(かこ)
みて遠望(えんほう)の便(たよ)り少(すくな)しと雖(いへ)とも春(はる)は山々(やま〳〵)霞(かす)みた
なひく又(また)山桜(やまさくら)咲(さ)き乱(みだ)れ浴客(よくきやく)心目(こゝろめ)を娯(たのしま)しめ夏(なつ)は
樹々(じゆ〳〵)鬱蒼(うつさう)として閑静(かんせい)なれとも夜(よ)となく昼(ひる)とな
く時鳥(ほとゝぎす)の声耳(こえみゝ)喧(かまび)しき程聞(ほときく)も珍(めつ)らし秋(あき)に至(いた)れは
樹々(き〳〵)の紅葉(こうえう)色(いろ)を争(あらそ)ひ四方(しはう)に錦(にしき)を張(はる)るがごとし