翻刻
冬季(ふゆき)は積雪(せきせつ)草木(さうもく)を埋(うつ)み千歳(ちとせ)経(ふ)る松(まつ)も姫小松(ひめこまつ)と
なりにける大原山(おほはらやま)の雪(ゆき)の曙(あけび)のと古歌(こか)の心(こゝろ)を思(おも)
ひ合(あわ)せて四方(よも)の降(ふる)雪眼(ゆきめ)のあたりに見(み)るも面白(おもしろ)
し又(また)感(くわん)多(おほ)し朝(あした)には異禽(いきん)の声(こえ)を聞(き)く夕(ゆふべ)には自(みつか)ら
茶(ちや)は煮(に)ることを楽(たのしみ)とし四季(しき)折々(おり〳〵)の詠(なか)め変(かわ)るは
山家(やまが)常(つね)の習(なら)ひなり
○温泉(おんせん)室(しつ)一宇(いちう)にして板屋(いたや)小羽(こは)葺(ふき)湯池(ゆつぼ)竪(たて)三間二
尺横二間《ルビ:四方|しはう》ともに石(いし)にて畳(たゝ)み上(あ)げ湯(ゆ)の深(ふか)さ
二尺《ルビ:中間|なかま》に板壁(いたかべ)を隔(へだ)て南(みなみ)の方(かた)を雑湯(ざつゆ)とす北(きた)の
方(たか)を留湯(とめゆ)と称(しやう)す是(こて)は中古(ちうこ)白石(しらいし)の領主(りやうしゆ)の片倉氏(かたくらし)の
浴室(よくしつ)にして庶人(しよにん)の入(い)る事(こと)を許(ゆる)さず故(ゆい)に留湯(とめゆ)の
名(な)のみ有(あ)れとも今(いま)は諸人(しよにん)入(い)る事更(ことさら)に妨(さまた)げなし
滝(たき)の高(たか)き湯面(ゆめん)まて六尺(ろくしやく)雑湯(ざうゆ)に二滝(にたう)留湯(とめゆ)に一滝(いつたう)
なり泉源(せんげん)は一口(ひとくち)なれとも之(これ)を大小(たいしやう)に分(わか)ちて大(おほ)
滝(たき)小滝(こたき)の名(な)あり
○温泉(おんせん)沸出(わきいつ)る源(みなもと)は浴室上(よくしつじやう)の湯神社(ゆじんしや)の法灯(ほうとう)の下(した)
の所(ところ)なり
○泉源(せんげん)の上(うへ)に薬師堂(やくしたう)あり今(いま)は温泉(おんせん)神社(じんじや)と称(しやう)す
○泉源(せんげん)の傍かたわら)には温泉(おんせん)の碑(いしふみ)あり
○浴室上(よくしつじやう)の玉垣(たまかき)は湯(ゆ)を分(わか)つ所(ところ)なり