翻刻
善光寺夢物語(ぜんくわうじゆめものがたり)
丁未春信州善光寺如来(ことしはるしんしうよしみつでらによらい)の開帳(かいせう)ましますに
より関東関西老若男女現当(くはんとうくはんさいろうにやくなんによけんとう)の善因(ぜんこん)をむ
すばんため日夜(にちや)の参詣(さんけい)おびたゝしく堂内(とうない)
の通夜(つや)はもとより宿坊旅宿(しゆくぼうりよしゆく)五百七百の人
をやどせしとなん爰(こゝ)に我国人三月(わがくにびとやよい)の末(すへ)頃|彼(かの)
地(ち)に至(いた)り如来(によらい)を礼拝(らいはひ)し有(あり)がたさの余りに
堂中(とうちう)に通夜(つや)なしける所
戌(いぬ)の刻(こく)すぎと思(おぼ)しき頃(ころ)
おもはず祢むらんとせ
しに一人(ひとり)の貴(たつと)き御僧(おんそう)
我肩(わがかた)を押(おし)て曰汝称名(のたまはくなんぢせうめう)
怠(おこたる)べからず今此大地(いまこのところ)ほど
なく異変有(いへんある)べし悲哉(かなしいかな)