翻刻
打(うた)れて即死或(そくしあるひ)は半死半生(はんしはんしやう)の者(もの)の苦(くる)しむ有(あり)さま
親(おや)をよび妻子(つまこ)を呼聲(よふこえ)満(みち〳〵)たりかくするうち
諸方(しよはう)の家(いへ〳〵)烟(けふり)たち火(ひ)もえいで忽(たちまち)に一圓(いちえん)の
火中(くわちう)となれば是(これ)に焼(やか)れて死(し)する者(もの)の呼喚(よびさけ)ぶ
聲(こえ)さながらも阿鼻焦熱(あびしやうねつ)の有(あり)さまも斯(かく)やと思(おも)ふ
ばかりにてあはれにも又すさまじと見目(みるめ)もいとゞ
恐(おそろ)したま〳〵|辛(からう)して屋根(やね)を破(やぶ)り逃出(のがれいつ)るも稀(まれ)には
あれど半身押(ハんしんおし)にうたれ居(い)て血(ち)を吐(はき)うごめき苦し
めり中にもあはれなるは小児(ことも)の片足押挟(かたあしおしはさ)まれて
抜事(ぬくこと)あたはず親(おや)も狂気(きやうき)にあせるといへどまくり
立(たて)る烟(けむり)にむせびて焔(ほのを)にやかれて是非(ぜひ)なくも子を
すて出(いつ)るも有とかや共(とも)に死(し)するもあり又(また)いと若(わか)き
婦人(ふじん)の柱(はしら)の間(あいだ)に挟まれて首(くび)は外面(そとも)に出(いだ)して夫(おつと)の
名(な)をよび助(たすけ)てよと呼(よび)さけふ男(おとこ)はやう〳〵これを