みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE1

豆州熱海温泉由来記 - 翻刻

豆州熱海温泉由来記 - ページ 3

ページ: 3

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箱根山に万巻上人とて智行(ちきやう)たけくいみしき聖(ひぢ)りまします かつて方広経(ほうくわうきやう)一万|巻(くわん)読誦(とくじゆ)満足(まんぞく)し給ひぬれば時の人万巻 上人とは号(かう)しけり生得(しやうどく)慈悲(じひ)深(ふか)くおはして偏(ひと)へに済度利生(さいとりしやう)を のみ致(むね)とし給ひける齢(よはひ)八旬に及ばれける此(この)常州(ひたち)鹿嶋(かしま)太神に 詣(けい)し衆生(しゆじゆう)済度(さいど)の方便(はうべん)を懇(ねんころ)に祈請(きしやう)し給ふに太神巫(かんなき)に託(たく)して 告(つげ)給わく上人慈済(じさい)の心(こころ)切(せつ)なる事神慮(しんりよ)に叶(かな)ひぬこゝに豆州 かも郡の海中に出湯有り|潮汐(うしほ)|常(つね)に沸湯(わきかへるゆ)となるゆへに魚(うを) 介(かい)の類ひ爛(たゞ)れ死する事数をしらずしかるに此出湯を以て人間 の浴(ゆあみ)する時は衆病悉除(しゆびやうしつじよ)の|霊湯(れいとう)也上|加持(かご)して是|磯(いそ)山の 上に遷(うつ)し給はゞ若干のいろくずの命を救(すく)ふのみならず普(あまね)く 衆生の病患(びやうげん)を愈(いや)すならんと託(たく)し給ひければ上人心肝に銘(めい)し いそぎ此地に来り見給ふに神託(しんたく)に露(つゆ)もたがわす海上に湯煙(ゆけふり) おこり潮波(うしほ)大|熱湯(ねつとう)と沸かへりて爛(たゝ)れ死(し)たる魚介(うをかい)は数かきり なく磯(いそ)にも沖にもみち〳〵たり上人|深(ふか)くあいれんしたゞずみ 給ふにいつくともなく老翁(おきな)出て来(き)て上人をはいしていふ やうわれは此所の者にて侍る願くは上人此|温泉(をんせん)を山上へ祈(いのり) 移(うつ)させ給はゞ救世(よをすくふ)の利益(りやく)是に過くべからず我(われ)も力をそへ 奉んと申てかきけして見えずとなり上人則(すなは)ち海辺に