翻刻
来らさる卒忽(そこつ)なる誤(あやまり)なりかやうなる
次第故(したいゆへ)われら方|所持(しよち)なす時計(とけい)は
諸国(しよこく)より来り又は店(たな)にて製(せい)する時計を
日毎(ひごと)に怠(おこた)らすして試見(こゝろみ)するなり而(しか)して
其時計を平常(つね)に運動(うんとう)させ置くそれら
の事は買人(かひて)の苦情(くじやう)をうけざる為(ため)なり
買人か安直段(やすねだん)なる時計をあがなひ買ふ
その需むる処の時計は人が死時計(しにどけい)と
あた名(な)を号(なづく)るところの時計にてその
時計を運動(うんどう)させんと欲(ほつ)して是(これ)をしば〳〵
時計師にかけて直(なを)さする然(さ)すれはか
ならす其|直(なほ)しの代料(たいれう)を時計屋に遣(つか)は
す其直し代(たい)を度〻(たひ〳〵)はらふ処の金|高(たか)
をつみ重(かさ)ねて計算(かんしやう)して見れははじめ
やすき直段(ねたん)に買(かふ)た時計が甚(はな)はた高(たか)
価なる時計となるあるひは其時計は
運動は滞(とゝこふ)りなくするといへども然(しか)しなが
らそれは時計を聢(しか)とあてにしてはか
る処の頼(たの)みにはならぬなり
あしき時計はときとしては強き「ゼン