翻刻
あるすなはち其大きさの区別(くべつ)といふも
のは時計の内矩(うちのり)をとらねはならぬ而して
あるひはまた刻限(こくげん)をわりつけたる盤(ばん)の
矩(のり)をとるべし及ひ金皮(きんかは)あるひは銀(ぎん)かは
の時計の外矩(そとのり)をとるべからずいかんと
なれは尤|華奢(きやしや)なる形ちの時計を買(か)ふ
て用ひんと人がおもふゆえに売人(うりて)が花(きや)
奢(しや)なる時計の正しき内矩(うちのり)のとるへきを
取(と)らずして取(と)るまじき外矩(そとのり)をとりて
ちいさき時計を大きなる時計のやうに
コロノメートルてあるゆえに時計の上にコ
ロノメートルといへる名を負(おは)するなり
殆(ほとん)と二ヶ年|已来(このかた)世上の人がこゝろえ違(ちがひ)をして
時の流行(はやり)に迷(まよひ)て女時計を専(もつぱら)に用(もちゆ)るこゝろえ違(ちがひ)
の流行(りうかう)にまよふといふ原因(ことのもと)をいかんと
いへば当時(とうじ)流行(りうかう)にて世(よ)の人の殊更(ことさら)に
好(この)む女時計といふものは小(ちいさ)なるゆえに
器械(きかい)がどうしてもくるひ安(やす)し其|故(ゆゑ)に
用(もち)ひて見(み)たるうへ後悔(かうくわい)する事ばかり多く
出来る夫に対して議論(きろん)【左ルビ:コトバタヽカヒ】をするそれは