翻刻
世の人の考(かんが)ゆる処と至極(しごく)に反対(はんたひ)する
なり其わけは世の人が流行(りうかう)にまよひ
心得違(こゝろえちかひ)をしてちいさくきやしやなる
女時計をよしとすれどかならず左(さ)には
あらずおよそ時計は大きなるに随(した)がひ
器械か手丈夫(てしやうぶ)に出来てあるゆえちいさ
からぬ堅固(けんこ)の時計を用ゆべきといふ事
をも厳密(げんみつ)に意見(いけん)をする事なりかつ
また一箇の時計の為(ため)に重荷(おもに)を
負(お)ふかごときはなはた大(おゝ)いなる
こゝろえちがひをなしてはならさる
なり及びちいさき時計を買(か)はんと欲(ほつ)
する人に十七形の大きさなる時計を買(かふ)
べしとすゝめて指図(さしづ)をする而して十八形
の大きさの時計(とけい)といへるものは器械(きかい)も丈夫
にて堅固(けんこ)なれは少しもあぶな気(げ)のこゝろ
づかひなし持料(もちりやう)の時計によく運動(うんとう)の
連続(れんぞく)する事が世上に広(ひろ)くしられて居(い)る
それゆえ十八形の大きさの時計を凡(およ)そ
十二年|余(よ)のひさしき間(あいだ)売(う)り捌(さばき)て居る