翻刻
すなはち其時計は用ゆるに工合(ぐあい)がよく
あふて而して売(うつ)たはじめの時のやうに
よき工合(くあい)に違(たが)はずいつまでも運動を連(れん)
続(そく)してたもつ
日本の人に今までの考(かんか)へを換(かへ)さするに
つきて第一に心附(こゝろづく)る次第がある其事
がらをふかく気(き)をとめて止(やめ)よといふは
ガラスで出来てある中蓋(なかぶた)のある時計は
運動(うんとう)する器械のはたらきがよく見透(みへすき)て
至極(しこく)見る処|見事(みこと)なるゆえに日本人は
大ひにこれをこのめども誠(まこと)に損傷(そんしやう)なし
やすき物(もの)にて甚(はな)はたあやうく大ひなる
不仕合(ふしあわせ)を生(せう)ず及び其時計をこはした
度(たび)ごとに直(なほ)し賃(ちん)を時計師にはらふ
また其上に時計の車(くるま)の輪(わ)のなかへガラス
の中蓋(なかぶた)のこわれが落入(おちいり)て大ひなる害(がい)を
生(しやう)する事の勘弁(かんへん)もなくガラス蓋(ぶた)の時計
を好(この)むかやうなるものゆえ是(これ)によりて
このあしき流行(はやり)を廃(はい)さんが為(ため)に猶(なほ)また
一層(いつさう)の意見(いけん)をくわふるなり而して時計の