翻刻
あきらかなり然(しか)れとも時計師(とけいし)に於
ては格段(かくだん)なる違(ちが)ひである世人(せじん)【ヨノヒト】か時計(とけい)
を撰用(せんよう)【エラ三モチイル】するにあたり十分(じうふん)なる鑑定(かんてい)
か届(とゞ)かぬなり
夫れ懐中時計(くわいちうとけい)あるひは懸時計(かけとけい)の
器械(きかい)か善(よ)き悪(あし)きを察知(しれ)さる事た
とへは盲目(もうもく)のことく手あたり次第(したい)に
是(これ)をさぐりとるなり若しも時計屋(とけいや)
のこゝろだてか正(たゞ)しからざる時には四
円(えん)かまたは六円ほとの品をもつて
八円あるひは九円にも甚(はな)〻たやすく売(うり)
あたふべし故に時計師(とけいし)の買人(かひにん)並(ならび)に
並常(へいじやう)【ナミ】の買人に注意(ちうゐ)させる為(ため)私(わたくし)どもに
於ては種〻(しゆ〴〵)なる品柄(しながら)の記号(きかう)【シルシ】を彫刻(ちやうこく)【ホリツケ】す
此(この)品(しな)に於ては買人(かひて)が少しも疑惑(きわく)【ウタガヒ】を生(しやう)
ずへからさるなり猶(なほ)此(この)説明(ときあか)し後文(かうふん)に
見へたり
夫れ獅子(しゝ)の印(しるし)は第(たい)一|等(とう)第二等の二
種(しな)なり蝶(てふ)の印は第三等なり無印(しるしなき)は
第四等なり