翻刻
の死亡(しバう)も有まじきに津浪によつて死亡多き
事ふしぎの珍事(ちんじ)なり其ゆへいかゝんことなれハ
地震(じしん)いかほど大ゆりいたし候にも主人たる人先
心を落(をと)し附家内火の用心を専一(せんいち)と見廻(みまわ)り
火鉢(ひはち)などに火の有ところに土ひん水を入てかけ
置|印形(いんぎやう)帳面大切の品〻用意いたし金銭の
類ひハ家内の人〻に割(わり)わたし置(おき)老人婦女
|幼年(ようねん)のものをさとし力を添てみだりにうごく事
なかれ天ざい地ようハ何れへのかれてよしともまた
難(なん)にあふとも斗りがたし万一うろたへ大|道(どう)
往来にて死亡(しバう)におよぶよりとても死(し)する命なれハ
家の内にて死する事かなるべきやしかれども現
在我家くづるゝを見て覚悟(かくご)を極(きハ)め観念(くわんねん)いたし
居るをいふニあらず其時の地しんのようすを得(とく)る
かんがへ其家のもやうによつてのがれ出て広場(ひろきば)
所(しよ)へ行(ゆく)もよし夫とても主たる人ハ心をおとし