翻刻
【右丁】
当国男女共に芸(けい)をたしなむ事専らにて。
六芸(りくげい)に通(つう)ずるもの八十余人有。孔子(こうし)の門 ̄ン人六芸
に通するもの七十二人と高慢(こうまん)に書て置かれしが。
此国芸者の多き事を聞て肝をつふし。猪(いのこ)の
昆布(こふ)巻と紫蘇(しそ)巻の棗をさゝげ物として。
あやまりに見へたとは古口なうそなれど。此上
又あほと芸者がふへるかもしれず。又此芸者
の外に。詩哥連俳茶香■【鞠ヵ】生花の類。総【惣】じて
【左丁】
何によらずはやる事甚しけれ共。やむ事も又
すみやか也。これを引風 芸(けい)といふ。はやる側
から止(や)むといふ心なるへし。皆日本人に対(たい)し
て咄(はなし)の間を合せるためにする芸にて。とかく
陰国(いんこく)なればゆるやかにぬらくらととり〆り
なし。日本にては人をなじりてこいつは流(は)
行(やり)ませうといふ事有。此国にてはこいつは
すたりませふといふ