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コレクション: 弘法大師関連資料

弘法大師御傳記 - 翻刻

弘法大師御傳記 - ページ 212

ページ: 212

翻刻

【挿し絵】 【慈覚大師御夢想の事】 ある人 慈覚(じかく)大師(だいし)の御前にて。仏法(ぶつほう)の事なんど かたり侍りけるつゐでに。高野(かうや)大師の真言(しんごん)はす こし荒涼(くはうりやう)なるべしなど申ければ。その夜(よ)慈覚(じかく) 大師(だいし)の御ゆめに見たまひけるは。高野大師の 御 弟子(でし)康修(かうしゆ)といふ人来て告(つげ)ていはく。和尚(くはしやう)にたい めんし給はん為(ため)に。我 師(し)来り給へりと云。慈覚(じかく)急(いそ)き 出給ふに。庭(には)の面(おもて)に一 本(もと)の蓮花(れんげ)あり。其上に五 鈷(こ)金剛(こんがう) 杵(しよ)有。其外は更に人みえず。慈覚(じかく)あやしみて是を問(とい) 給ふに。康修(こうしゆ)答(こたへ)ていはく。此 金剛(こんがう)杵(しよ)はすなはち我大 師(し)なりといへり。慈覚(じかく)ゆめさめて此事をたつ とみ給ひけり

現代語訳

【慈覚大師の御夢想の事】 ある人が慈覚大師の御前にて、仏法のことなどを語っていたついでに、「高野の大師(空海)の真言はいくらか荒廃しているのではないか」などと申したところ、その夜、慈覚大師がご覧になった夢に、高野大師の御弟子で康修という人が現れて告げて言うには、「和尚(空海)にお目にかかっていただくために、我が師がおいでになりました」と言った。慈覚が急いでお出になると、庭の面に一本の蓮の花があり、その上に五鈷金剛杵があった。その他にはまったく人の姿は見えなかった。慈覚が不思議に思ってこれを問われると、康修が答えて言うには、「この金剛杵こそが、すなわち我が大師にございます」と言った。慈覚は夢から覚めて、このことをたいそう尊いことと思われた。

英語訳

【On the Dream Vision of the Great Master Jikaku】 On an occasion when a certain person was in the presence of the Great Master Jikaku, speaking of matters of Buddhist doctrine, he remarked that the Shingon teachings of the Great Master of Kōya (Kūkai) had perhaps fallen into some degree of neglect and disarray. That very night, the Great Master Jikaku had a dream in which a man named Kōshū, a disciple of the Great Master of Kōya, appeared and announced: "Our master has come here so that he may have an audience with Your Reverence." When Jikaku hastened outside, he found a single lotus flower in the garden, and upon it rested a five-pronged vajra (gokosho). There was no sign of any other person. Jikaku found this strange and asked about it, whereupon Kōshū replied: "This vajra is none other than our Great Master himself." Upon waking from the dream, Jikaku held this vision in the deepest reverence.