翻刻
こきませて都そ春の錦なりける
とよみしにかはり遇(たま〳〵)瓦をもて
屋根をなせしは焼残りの色香りし
瓦も交(まじ)りて 見渡せは杦皮わらを
|茨(ふき)ませて都の屋根も|田舎(いなか)なりけり
と|浅間(あさま)しくかかる|容体(ありさま)を見るに
も人は|常(つね)〳〵其|獨(ひとり)を|慎(つゝし)み不|義(き)
の|冨(とみ)を|貪(むさぼ)らずもし冨に至る
とも|一己(いつこ)の|儉約(けんやく)を|守(まも)り何某か|義田(きてん)
を|営(いとな)みしに|效(なら)ひ|親族(しんそく)を|扶助(ふじょ)し
|他人(ひと)の|窮難(きうなん)を|救(すく)ひ|陰徳(いんとく)を|施(ぼこ)
し治世を|甘(あま)んし
御上よりの御|法律(ほうりつ)を|守(まも)り忠孝
を|忘(はす)れず一心をあらうに|生涯(せうかい)
を送るへし此度のこときは出火
のみならず|恐懼(けうく)のこともあれば