翻刻
の金子は焼爍(たゝれ)て一塊(いつくはい)となれり
小川二条辺の旧家に火かゝりけるに
得意の小使取来合居|矢庭(やにわ)にきぬ
夜具(やく)|六流(むながれ)肩(かた)げ出し二丁斗もわきへ
持出し扨こゝまでは出したれとも
此侭にては焼果(やけはつ)へし此上はわれにも
無賃にては得持まじといふに是非(せひ)
なく其夜具の半分は可遣間もち
去(さ)れといふに然(しから)はとてのこらす持
のき六流|恙(つゝが)なく小使とりも半分
の徳分を得たり此家はもとより
諸侯方(しよこうかた)の旅館(おやと)もなし給ふなれは
其|設(もうけ)の夜具ゆへ其|結構(けつこう)さはいはても
知れたり
四条辺に迎火に心得ある人ありて 出
火ときくより諸道具|縄(なは)からみ