翻刻
いたし置き近邊|懸(かけ)あるき 金子
五両にて地車一輛買とり夫にて諸
道具宿坊へはこび課(をふ)せ夫より其地
車を以て諸方の荷物|運(はこ)ひ駄(た)ちん
金三十両はかりも儲(まう)け跡の車は不用
ゆへ賣拂ひけるとそ世智(せち)に賢(かしこ)き人
にて一身の凌(しのき)に妙を得たれとも他(た)
の危急(ききう)につけこみ悲分(ひふん)の金銀|設(もう)
けなさんより親族(しんそく)または平常(へいせい)懇(こん)
意(い)の方の助(たす)けともならばわづかに地車
の駄ちん三十両ばかりにあらす 天地
よりの恵(めぐ)み幾(いく)百両ともかきらしを折(せつ)
角(かく)地車の心付きなしなから薄(うす)
まうけは残念なり こは前の小使取
と同等(とうとう)の人にして眼前(がんぜん)の小|慾(よく)
ものなるべし