翻刻
五条邊何某といふ米や四斗俵凡五十
俵はかり五条橋詰まて運ひ出せ
しに火|勢(せい)ます〳〵つよく我(わか)家に
火の罹(かゝ)りしを見てまた〳〵外へ
持出す気力|抜(ぬ)け米持にくるものあら
は何程(なにほど)なりともて遣間勝手に持されよ
といふに難渋(なんじゅ)人おもひ〳〵に持去り
焼(やけ)うせす人のためになりしはよき
ことなり此時の無欲(むよく)の心の十分 一
平生(へいせい)にあれかしと思ふ
六角ふや町あたり飛(とひ)火|来(きた)りしに向(むかひ)
側(かは)の人しらせけれは早速屋根へ
のほり見廻し無何事下りけるに
其跡よりもえ出し近火此火廣か
れりもしやねにゐるうち燃(もへ)出し
なはあやうき事なり火は先瓦の