みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE9

那為の後見艸 全 - 翻刻

那為の後見艸 全 - ページ 31

ページ: 31

翻刻

過出棺して赤坂の菩提寺へ葬送し仏事回向も終りて葬 穴に納めんと舁出今少しといふ頃地震ゆり出左右 前後の石碑とも倒れ掛り輿ヶき并附添のものも足抔 疵請からく穴中江投込て立たりしとなり然ㇽに立戻 りて見れば本堂ハとく崩れて微塵となりぬもし地震 今少し早ヶりせハ和尚を初め施主送りの人迄皆諸共 に横死せんにと其近親の人より聞たりも奇事と いふへき也姓名等も能知りたる人なれと印し難し 此節関宿の城下町に住せるもゝの娘新吉原へ売女に売 れしか去年中相応の町人に請出され《割書:京橋に住ける|唐紙御用達也》しか此度 地震に家潰れておしに打れて知れざれを在所の母たま〳〵 尋ね来りてかくと聞しより忽ち絶倒しそのまゝ終に死 しけるかつくの日崩れし家財を取片付けるとてかの娘を堀出 せしに不思議に未た死しきらて息あらば気つけ抔あたへ て蘇生したり今少し早く掘出しなば母も無難に有るべき にと人皆かなしミしと云此話ハ己方に去年より奉公 せる関宿町人の娘ありて彼か親なるもの是を地震の安否 をきかせばやとて尋ね来りての物語りなり 八丁堀に住る有徳なる櫛屋あり其娘おとりを習ひて わさも能出きし故おやども常に自まんしてゐたる二日