翻刻
荷物等を積て囲ひとなし爰に寝る事一般也斯て七八
日頃に至り地震漸〳〵薄らくに随ひ追々野陣するもの
少く且十四日終日雨降るに依て野宿止ミたりその假住居
せし中には御城下御堀淵御見附の内外広場外神田広小
路上野広小路浅草広小路忍か岡新土手浅草寺地内花
やしき本郷六丁目加藤様御門前九段坂上護寺院原等群
集夥し《割書:仮借宅の絵図|有爰に畧ㇲ》
新吉原日本堤震ひ動く事取分強く大地震忽ち烈裂破
れ一筋の白気なゝめに飛去金龍山浅草寺なる五重搭
なる九輪を打曲ヶ散して八方へ散るその光眼を射てす
さましといふ
按に此白気の立しと云破堤の裂て吹出しに派あらし
恐らく破此辺織田家六郷家抔の下屋敷多けれ
ばその焔硝蔵へ火気移りて合薬のはねしにも
あらんか搭の九輪の棹の曲りたるさま地震の所ゐと
ハおもはれすもし地震の為にかたむかんにハ搭とも
その儘倒れへきはつなり此度丸の内辺大名屋敷
の焼失多きも元地震の潰より発るといへ共所々に
火薬の貯有し災ひも少なからすといふ論なりさ
も有ぬへき事と知られぬ