翻刻
番所も二所なから倒れ馬場の辺なる御長屋も倒れかゝり
潰れぬ斗りと成たりその後表御門の前をよきりしに
下馬の東につゝきし御長屋も一棟全く潰れしさまにて
板もてかこひ有之
四日牛込榎町宗柏寺ハ己か実祖父老妣の墳墓なれは
参詣して倒れし石碑の仮片付抔石工にあつらへ置て帰り
ぬ彼辺ハ強き破損も見へす釈迦堂ハぬり屋なれハ壁瓦
抔おちしのミ也道すからも土蔵の類は皆破損したり
薬王寺なる前松坂屋といふ酒味噌類商ふ見せハこゝら
にてハ大家なるか倒れぬ斗りに損したり又夫ゟこなた
なる多門伝八郎といふ屋敷の石垣崩れ出て隠宅の物見
倒れかゝり又門も玄関も大破となれり此屋敷と尾州の西
御長屋と向ひ合たるか両かわ共強く損するを見れハ此辺地
脉あしくて強くゆりしとおもはるまた浅草新堀端なる
淨念寺ハ太宗代々の墳墓《割書:即己か曾祖父母|以上の葬地なり》及ひ当家代々の墓
所なれハ此日児改容して参詣なさしめしにかしこも石碑
ハ皆倒れなりしと云
五日きのふ改容淨念寺に詣し時本所石原なる同姓芳五郎
《割書:太宗代目|の家督也》の住宅惣潰れとなり小者二人即死せしを此夜
当寺へ葬せられしと役僧語りしときゝつれはけふ彦十郎