翻刻
《割書:用人格|の者也》を使として見舞たるに家内ハ皆無難にて産婦も
《割書:芳五郎の妻にて九月廿四日安産し此節また夜伽の者附そひたるか去年新|に立し座敷を産家としてそれに多く集りおれるをもて恙なかりと云又》
《割書:当主ハ居間の二階にありしか寝たる前なれハはせ下り|かの産所へおもむきしゆへおしにうたれすといふ》障事もなしと
いふ玄関使者の間客座敷居間勝手口皆潰しゝかと昨年新
に造営せる一宇と表長屋大破のミにて倒れされハ夫に
仮住居すと申こさる又甥なる池田新之助《割書:本所三之橋北通り|津軽越中守新屋敷》
《割書:の東|向也》をも問尋せしにかしこハ全く惣潰れにて一宇も残らす
しかのミならす妹一人大怪我して助るへくも覚へすといふ
事也其後新之助の姉なる栄照院と云老婆家方へ来りし
時の話にきけハかの辺ハ地震取分強くしてゆり出すとひと
敷忽ち家かたふき崩れし故逃出るひまもならすたゝ当
主と松之助《割書:新之助|か忰也》のミ運能庭にかけ出づれとその餘の
家内ハ皆壁土に埋られ障子天井等の下におし伏られて
身もうこかしかたきか火災なきをもて追々人集りて取出
なせりかの壱人の妹ハたま〳〵二階下の座敷に在て梁木
にしかれつれは実ハ其儘即死なりそか中に最ふ思義
なるは栄照院也此夜二階之上にたゝ独り居しかゆり出
すやいなややみと成りて階子下るへき方角も失ひこ
こにて死せんとおもひ定めて伏しおりしにはからす
側なる壁破れて穴あきたれハ夫よりはひ出て下家の