翻刻
潰れと也わつか下家の小なるかたゝ一宇残りたり此辺地震の
強きをもひ知らる《割書:或人いふ水府御屋形の御破損ハたやすきことにあら|す御次向及ひ所々等ハ勿論御蔵など潰れし事
》
《割書:夥し御殿向とても御大破なりし証拠は御修理容易に御とゝのひかたくて十一|月中旬過まて御庭なる御茶屋に仮の御差掛御しつらひにて夫に君公あわしま》
《割書:し御近習向并に女中抔ハ御芝原に仮囲ひの仮家造りてそこに置れしとかや
|是らをもてその御大破なるをおもひ合さるといひきおのれ去ㇽ六日駿河台より》
《割書:歸るさ水道橋を渡りて表長屋通りを過しに東の通用門ハゆるミて開閉|ならねは長屋と御蔵との間へ仮御門を取たてられんとて工人等つとぃたり》
《割書:その処よりひそかにさしのぞき見しに内御長屋等の御破損夥し又表御門脇|の腰掛ハ全く潰れ御玄関御書院辺も目に立程損せし如くなり夫より百間》
《割書:長屋の方へ掛けてハ所として全きハなく住居もならさるにやこと〳〵く|たてこめたるか多く見へたり》
春日町辺も破損の家多し向富坂を越本郷に登りてハやゝ
破損少く亦湯嶋切通を過き御成道辺より下谷御徒町
江かけてハ又大破の家多く夫のミならす上野広小路の東側
より出火し東ハ下谷長者町西ハ御成道あたり迄延焼せし
かは土蔵も残らすなへて廣原となれり扨己は広小路を横
切て下谷蓮池通りへかゝり三味線堀の橋を渡りて浅草新
堀端に出しか三味せん堀東ハ地震やゝ軽きさま也かくて
御寺江立より石碑の倒れしを修理すへしと寺の門前な
る石工にこま〳〵指揮し夫より浅草蔵前通りを南へよき
りしに此あたりさせるゆりとわおもわれされと家なミ塗こ
め造りの大家なれハ一宇として大破ならさるハなし大災の為
めにハ土蔵造りにしく事なけれと地震にハ甚危きものとお
もわる夫より浅草御門を入て両国広小路に出薬研堀辺を巡