翻刻
小人いゝ子の振して牡丹を付けたる稽古着なんぞに
股引はき込頭巾を冠つて出かけるなそとハとうした
こんたよ段々こうして今た残らす髪ミも延して飯を
も喰そに三度の食事ハ犬猫殺して喰ふてあるだ
ろ此比専ら蘭学はやり一文不通の当氣の奴らかガラ
ンマチカを一冊あけると先生願にて蕃畫の祠の出役な
そとハ片腹痛いそ後にハ定めし聖堂潰て畜生の
祠を建るて有たろ嵐に付てハ百俵以下へハ取越米
にて下さるなんそと皆米もときに書付面にて少ハ御家人
息つく積りて祝ひからせて間もなく御米か渡つて見たれ
ハこいつもやつはり山師の細工て諸人を一はいおこわに
拠たる御米を上下に渡すといふのハ扨々きたない仕方ぢやな
いかへヶ様な事てハ諸人の心は中々とれねへ却て気
けんを損しる道理た是とハ違て今度の張紙相場のよ
いのハ書損ちやないかへ定めしこいつも舂屋かくさめに吹屋
様なるぼんぼち米をハ渡すで有たろ命の本なる兵糧并
諸民を助ける籾蔵なんそハこわれたまんまて自滅の本な
る大船なんそを造ると云のハとうしたこんたよ誠に困た
へらほら野郎だ己れが天下の政事か出来ぬて諸人
を頼ミて時務策しろとハあきれたこんたよ左様に
政事かまくらやみなら明るい仕方に譲らさなるなん
夫をも構ハす恥をも恥とも思わぬけたもの犬にハおと
るせ御役に立すな伊賀殿なんそハあきれを止めて
云たい事をハ十分云れて病気と号して引たぢやな