東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト8

福神おしへの小槌 2巻 下 - 翻刻

福神おしへの小槌 2巻 下 - ページ 6

ページ: 6

翻刻

 覚(おぼ)へ来(きた)りたるやと。尋((たづ)ねければ。彼(かの)親父(おやぢ)申けるは。  我(わが)習(なら)ひ来(きた)りしは。我(われ)相応(さうおう)のいろは字(じ)にて。かん  にんの四字(よじ)を守(まも)れと申 学問(がくもん)なり。此(この)学問(がくもん)をいた  して。腹(はら)の立(たつ)ことはいふに及(およ)ばず。言度事(いゝたきこと)も見度(みたき)  事(こと)も。かんにんの四字(よじ)を守(まも)りてこらへ。うまいものゝ  喰(くひ)たきも。よい衣服(なり)のしたきも。酒(さけ)の飲度(のみたき)も。遊度(あそびたき)も。  かんにんの四字(よじ)をまもりてこらへ。銭(ぜに)にてのけてをき  申に付(つき)て。身体(しんだい)の勝手(かつて)もよく。心(こゝろ)も身(み)も安楽(あんらく)になり  申候。有(あり)がたき学問(かくもん)を覚(おぼ)へ帰(かへ)り申候なりと。はなし  ければ。儒者(じゆしや)腹(はら)をかゝへて笑(わらふ)ていわく。扨(さて)〳〵教(おしへ)し  ものも。習(なら)ひしものも。何(いづ)れおとらぬ文盲(もんもう)かな。かん  にんは。たへしのぶといふ二字(にじ)にこそあれ。かんにんの  四字(よじ)といふことあるべきや。汝(なんぢ)も是(これ)より堪忍(かんにん)の二字(にじ)  といふべし。四字(よじ)といひて。人(ひと)に笑(わら)わるべからずと申  されければ。彼(かの)親父(おやぢ)申されけるは。其(その)元(もと)様(さま)のやう  なる。御学者(おがくしや)に申候へば。たへしのぶの。なんのかのと。