翻刻
れてなやみぬる声(こへ)かまびすしくくすしの西東へ
馳(はせ)るを聞につけ見るに迷(まと)ひいと心づかひして
其夜も東じらみをまち明(あく)る三日日もかわりなば
些(ちと)ゆるがんことを祈り人の顔色(かんしよく)かわり俗語(そくこ)に
青い顔といらふくせしもむべなる哉口は火用心 盗賊(とうそく)
随分心得て油断(ゆたん)なく日夜心を配(くは)りけん異説(いせつ)
浮(ふ)説をいゝふらすものありて捕(とらは)るゝもあり中に
盗(ぬす)みはたらく悪党(あくとう)は天の罪(つみ)眼前(かんぜん)たり町々
家 並(なみ)に水 鉄砲(てつほう)をかまへ家根へ水を遣(や)り常に
手 荒(あら)き事もとりあつめおのこも土足(はだし)になり
水を汲(くみ)はこびぬるもいとおかし藪持(やふもち)人は藪
或は野へ食物ををはこび老人子供の手を引
連行(つれゆく)も有三日夜もまさ〳〵明しぬるに明(あ)ケ
六ツ時やゝ|曇(くも)りて雨ぱら〳〵と降(ふり)出しけるに
跡一天 雲(くも)やけとなりて一めん黄色(きいろ)になり
誠におそろしきけしきなるを皆人の処へ