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コレクション: 松平文庫

覚書(備考雑録写9) - 翻刻

覚書(備考雑録写9) - ページ 16

ページ: 16

翻刻

【右丁】  びんぼくちとりせよと被仰けるに何も秀  吉に譲りて誰のこるへきと云者なし  信長公せん方つきさあらは秀吉相残れ  弓鉄炮を残しおかるへしと被仰けれは  秀吉願を被申けるは今度私に御加勢被  成候弓鉄炮の者とも私に心を合せ働よき者  は私罷帰候而言上可仕其節馬壱疋の侍に  被成可被下又傍輩衆より御合力の者とも  今度よく相働は御直にめされ同しく  馬壱疋の侍に御取立可被下左様御座候はゝ 【左丁】  忝可奉存と被申けるに信長公のいわく汝  か望み尤也此節にかきらす働よき者  は少知申付へしと有けれは秀吉惣  軍勢の中を自ら大音声にてふれま  はられける残る者とも一勢付心よく居お  もひけるさて信長公より三百人《割書:二百五十と|も申ける》  人持傍輩とも〳〵十二十つゝ加勢いたし侍  れは四百計も是ありけるに金崎の  麓気比明神の大道両脇幸と下木  茂りて木深けれは両脇に五十人つゝ     

現代語訳

【右丁】 (皆)貧乏くじを取れと仰せになったところ、誰もが秀吉に譲って、誰が残るべきかと言う者がいなかった。信長公は手段が尽きて、「さあらば秀吉よ、残れ。弓・鉄砲(の者)を残し置かれよう」と仰せになったところ、秀吉は願いを申されるには、「此度、私にお力添えいただく弓・鉄砲の者どもの中で、私に心を合わせてよく働いた者は、私が罷り帰った後に言上仕る。その節に馬一疋の侍(一騎持ちの侍)になしていただきたい。また、同輩衆よりお力添えをいただいた者どもも、此度よく働いた者は、お直々に召し出されて、同じく馬一疋の侍にお取り立ていただきたい。左様でございますれば、 【左丁】 かたじけなく存じ奉る」と申されたところ、信長公のいわく、「汝が望み、もっともである。この節に限らず、よく働いた者には少々知行を申し付けよう」とあったので、秀吉は軍勢全体の中を自ら大音声にて触れ回られた。残る者どもも一勢(ひとかたまり)に付いて、心よく(意気込んで)居り思われた。さて、信長公より三百人(二百五十とも申す)、人持・同輩衆より十人・二十人ずつ加勢いたし侍れば、四百(人)ほどにはなりけるに、金崎の麓、気比明神の大道の両脇に、幸いと下木が茂って木深かったので、両脇に五十人ずつ……