翻刻
を置(を)き一は熱湯(ねつたう)を引(ひ)き一は冷泉(れいせん)を貯(たくは)ひ一は冷熱(れいねつ)調(てう)
和(わ)して入浴(にうよく)の用(よう)に供(けう)す又|別(べつ)に一|槽(さう)を高処(こうしょ)に置(を)き底(そこ)
或(あるひ)は横(よこ)に小口(こぐち)を開(ひら)き栓(せん)を用(もち)ゐて其(その)開閉(かいへい)を自由(じゆう)にし
以(もつ)て局部(きょくぶ)の定(さだ)まれる患者(くわんしゃ)の滴浴(ゆたき)に備(そな)ふる者(もの)あり《割書:近|来》
《割書:古屋市郎左ヱ門一室うぃ設け筧を以て小瀑布を引き|患者の滴浴に便にす故に局部の患害ある人は時々》
《割書:其室に入て此法を|行ふも又可なり》
○温泉(おんせん)宿(やど)の浴客(よくかく)を接(せつ)する唯(たゞ)其席(そのせき)及(およ)び寝食等(しんしょくとう)の什器(じうき)
を貸(か)すのみ而して飲食(いんしょく)其他(そのた)すべて浴客(よくかく)の自弁(じべん)に任(まか)
す然(さ)れば浴客(よくかく)各自(かくじ)の適宜(てきぎ)に随(したか)ひ或(あるひ)は手(てづ)から飲食(いんしょく)を
調理(てうり)し或(あるひ)ひは婢(ひ)を雇(やと)ふて之(これ)を弁(べん)ぜしむみな随意(ずいゐ)た
り
○席(せき)に大小(だいせう)あり陋美(ろうび)ありまた浴客(よくかく)の望(のぞみ)に任(まか)す席費(せきひ)
一|週間(しゅうかん)金(きん)三四十|銭(せん)より乃至(ないし)二三|圓(ゑん)の間(あいだ)たるべし席(せき)
巳(すで)に定(さだ)まれば食器(しょくき)茶具(ちやぐ)煙草盆(たばこぼん)等(とう)日用(にちよう)什器(じうき)の類(るい)概(おほむ)ね
みな具(そな)ふ而して是等(これら)の器具(きぐ)は別(べつ)に其(その)損料(そんれう)を収(おさ)めず
唯(たゞ)臥具(ぐわぐ)は其(その)品等(しながら)に随(したが)ひ一|週間(しゅうかん)金(きん)三四十|銭(せん)より乃至(ないし)
一二|圓(ゑん)の損料(そんれう)を受(う)く《割書:文政十三年七月山東庵京伝此|地に浴せしとき著したる熱海》
《割書:温泉図彙によれば亭主より食事を賄へは一まわり|七日の食料一人前金百疋湯料として銀二匁つゝを》
《割書:定めとす云々と見ゆ僅に四十八|九年を距て世事の変遷驚くべし》又(また)温泉料(おんせんれう)として一
日(にち)一人|金(きん)一|銭(せん)五厘を納(いる)るを定(さだめ)とす