翻刻
【右丁】
十五
商陸(やまごばう) たうごばう共云 味(あぢ)辛(からく)酸(す)性(しやう)平(へい)にて毒(どく)あり一に苦(にがく)性(しやう)冷(れい)也 白根(しろね)を
取(とり)切(きつ)て片(へん)となし煠熟(ゆびき)水(みづ)を換(かへ)浸(ひた)し洗淨(あらひきよく)す此(この)ものを製(せい)するには薄(うす)く切(きり)
流水(ながれ)に二宿(ふたよ)ひたし取出(とりだ)し豆(まめ)の葉(は)を甑(こしき)にして段々(だん〳〵)隔(へだて)に入れて蒸(むす)こと六 時(とき)
程(ほど)にして取上(とりあげ)食(しよく)す豆(まめ)の葉(は)なくは豆を用てもよし荒政要覧(くはうせいえうらん)にみへたり
又 灰湯(あくゆ)にて能(よく)煑(に)度々(たび〳〵)水を換(’かへ)二三 宿(しゆく)浸(ひた)しさわしたるもよしといへり
葉(は)も又 灰湯(あくゆ)にて煑熟(にしゆく)し粮(かて)とすべし水種(すゐしゆ)あるも者(もの)つねに商陸(しやうりく)を用(もちゆ)る
こと人(ひと)の知(し)る所也
野胡薩蔔(のにんしん) 荒野(くはうや)の中(うち)に生(しやう)じ苗葉(なへは)家胡薩蔔(にんじん)に似たりともに細小(さいせう)其(その)
根(ね)味(あぢ)甘(あまし)生(なま)にて食(くら)ひ蒸(むし)て食(しよく)し皆(みな)宜(よろ)し洗浄(あらひきよ)にし皮(かは)を去(さり)生(なま)にて食(くら)ふも又 可(か)也
土圞児(ほど) 根(ね)をとり煑熟(にじゆく)しこれを食(くら)ふ塩(しほ)を加(くわ)へ害(かい)なし
【左丁】
羊蹄苗(しふくさのなへ) ぎし〳〵和(わ)の大黄(たいわう)支那(もろこし)の大黄(たいわう)の葉(は)に似(に)たれとも差(たが)へり
薬種(やくしゆ)としては瀉薬(しややく)なれども大に異(こと)なり救荒本草(きうくはうほんさう)に嫰苗(わかなへ)葉(は)を取(とり)
煠熟(ゆびき)水(みづ)に浸(ひた)し苦味(にかみ)を淘浄(さわ)し油塩(しやうゆ)に調(とゝのへ)て食(くら)ふ其(その)子(み)熟(じゆく)す
る時(とき)子(こ)を打搗(うちつい)て米(こめ)となし滾湯(こんたう)を以(もつ)て三五 次(たび)淘浄(さわし)鍋(なべ)に
下(くだ)し水飯(かゆ)となし食(くら)ふ微(やゝ)腹(はら)に破(さはる)とあり一 書(しよ)に今(いま)試(こゝろむ)るに葉(は)味(あぢはひ)微(やゝ)
酸(すし)根(ね)味(あち)苦(にが)し何程(なにほど)さわしても食(しよく)しかたし葉(は)はゆびきたるばかり
にてもよしといへり
棗(なつめ) 腹脹(はらはり)羸痩(るいさう)には食(くらふ)べからす又 葱(ねぎ)と同食(どうしよく)すべからず酸棗麪(さんさうめん)とて麺(めん)
にも作(つく)る春(はる)は嫰葉(わかば)を採(とり)煠熟(ゆひきじゆく)し水に浸(ひた)し黄色(きいろ)になる時(とき)淘浄(さわしきよふ)し醤(しやう)
油(ゆ)又は味噌(みそ)にて調(とゝのへ)食(くら)ふ又 飯(めし)に和(まじ)へ食(くら)ふもよし此(この)もの根(ね)はびこり地中(ちちう)より
現代語訳
【右丁】
十五
ヤマゴボウ トウゴボウとも言う。味は辛く酸っぱく、性質は平で毒がある。一説には苦く性質は冷である。白根を
取って切片とし、茹でて水を替えながら浸し洗い清める。これを調理するには薄く切り、
流水に二晩浸し、取り出して豆の葉を蒸籠に段々に仕切りとして入れて蒸すこと六時間
ほどにして取り上げ食用とする。豆の葉がなければ豆を用いても良い。『荒政要覧』に見える。
また灰汁でよく煮て、度々水を替え二三晩浸してさらしたものも良いという。
葉もまた灰汁で煮熟し、食料とすべきである。水腫のある者がいつも商陸を用いる
ことは人の知るところである。
ノニンジン 荒野の中に生じ、苗や葉は栽培ニンジンに似ているがともに細小である。その
根の味は甘く、生で食べ、蒸して食べ、皆良い。洗い清めて皮を去り、生で食べるのもまた可である。
ホド 根を取り煮熟してこれを食べる。塩を加えても害はない。
【左丁】
シュウクサノナエ(ギシギシ) 和の大黄、支那の大黄の葉に似ているが異なっている。
薬種としては瀉薬であるが大いに異なる。『救荒本草』に若い苗や葉を取り、
茹でて水に浸し、苦味をさらし取り、醤油で調味して食べる。その実が熟する
時に実を打ち搗いて米となし、熱湯で三〜五回さらし洗いし、鍋に
入れて粥となして食べる。やや腹にさわるとある。一書に今試すに葉の味はやや
酸っぱく、根の味は苦い。どれほどさらしても食べにくい。葉は茹でただけ
でも良いという。
ナツメ 腹部膨満や痩せ衰えには食べてはならない。また葱と一緒に食べてはならない。酸棗麺として麺
にも作る。春は若葉を採り茹で熟し、水に浸して黄色になる時にさらし清め、醤
油または味噌で調味して食べる。また飯に混ぜて食べるのも良い。このものは根がはびこり地中より
英語訳
【Right Page】
Fifteen
Pokeweed Also called tōgobō. The taste is pungent and sour, with neutral nature but poisonous. One theory says it is bitter with cold nature. Take the white root,
cut into pieces, boil and soak while changing water to wash clean. To prepare this, slice thinly,
soak in running water for two nights, remove and use bean leaves as dividers in a steamer basket to steam for about six hours,
then remove and use as food. If bean leaves are unavailable, beans may be used. This appears in the "Kōsei Yōran."
It is also said to be good when boiled well in lye water, changing water repeatedly and soaking for two to three nights.
The leaves should also be boiled in lye water and used as food. That people with dropsy regularly use pokeweed
is well known.
Wild carrot Grows in wasteland, with seedlings and leaves resembling cultivated carrot but both being small. Its
root tastes sweet and is good eaten raw or steamed. It is also acceptable to wash clean, remove the skin, and eat raw.
Groundnut Take the root, boil until cooked and eat. Adding salt causes no harm.
【Left Page】
Dock seedlings (Gishigishi) Resembles the leaves of Japanese rhubarb and Chinese rhubarb but differs from them.
As medicinal herbs they are purgatives but greatly different. The "Jiuhuang Bencao" states to take young seedlings and leaves,
boil and soak in water to remove bitterness, then season with soy sauce to eat. When the seeds ripen,
pound the seeds into rice-like grains, rinse three to five times with hot water, put in a pot
and make into porridge to eat. It somewhat upsets the stomach. One book says when tried now, the leaf taste is slightly
sour and the root taste is bitter. No matter how much you rinse, it is difficult to eat. Leaves are fine
just boiled.
Jujube Should not be eaten by those with abdominal distension or emaciation. Also should not be eaten together with green onions. Can be made into noodles
called sour jujube noodles. In spring, pick young leaves, boil until cooked, soak in water until they turn yellow, rinse clean, season with soy
sauce or miso and eat. It is also good mixed with rice. This plant spreads its roots underground.