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勇魚取絵詞 - 翻刻

勇魚取絵詞 - ページ 65

ページ: 65

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【上段】 萬𫒙全圖【枠囲い】 銘を三德と云身長さ三尺八寸重さ一 貫五百目生がねにて作る突たる時曲り 込て抜ざる為也此𫒙用ひ方は鯨纲 にかゝりて海靣に浮ひ出汐吹時㔟 子舩等に乗居る羽指のもの此𫒙を もろ手にてふり上五六間ばかりも 隔或は舩数艘を打越ながら投突ほど に𫒙は真直に落て鯨に中るなり その中り所また突方にも習ひあれ ば猥に突にはあらず鍛煉の業に して常人のならぬ事也一番𫒙二 番𫒙先後を争ひ突さま第一の見 物也冬組の内纲かぶりし𩵋は一 番𫒙にても一々には褒美なし 二三度も重れば有也冬組の内に ても纲はづれし𩵋突 畄れば褒美あり 春組になりては 突を専ら にする 故 「三德」 纲かぶら ずに突 畄れば一 番より四番 舩まで褒美 をえさする也 春は鯨さかりて 群立ものにも 怖れず纲に かゝり兼るゆゑ 突を専にはする なり萬𫒙は不残 突事も有また 𩵋盛には跡より 追々来る故をし みて𩵋の様子次㐧 五六本或は十本ばか り突て直に剣にて 切なり萬𫒙羽矢 𫒙剣は皆生がねなり その余の刃物には少し 刃がねを交ふしかし 小切庖丁は生がねなり 不断研ゆゑなり 【下段】 萬(よろづ)𫒙(もり)込(こみの)全圖(ぜんづ)【枠囲い】 込を縄にてかりに結ひ 付るわらを結ひそへたる は締りよきため也柄は 椎の丸木長さ八尺あり 鯨を突て牽にまかせ 結付し縄は切れて柄 は流れ捨る也身は突 たるまゝ曲り込蕪に かゝり抜る事なし萬 𫒙に付綱初めに根 荢十二尋次に加賀 荢廿四尋次にしらせ 廿四尋合て六十尋付也

現代語訳

【上段】 **万銛全図(よろずもりぜんず)** 銘を三徳という。身の長さ3尺8寸、重さ1貫500目。軟鉄で作る。突いた時に曲がり込んで抜けないようにするためである。この銛の用い方は、鯨が網にかかって海面に浮き出て潮を吹く時、子船などに乗っている羽指の者がこの銛を両手で振り上げ、5、6間ほども離れ、あるいは船数艘を打ち越しながら投げ突くほどに、銛は真っ直ぐに落ちて鯨に当たるのである。 その当たり所、また突き方にも習いがあるので、みだりに突くのではない。鍛錬の技であって、常人にはできないことである。一番銛、二番銛が先後を争い突く様は第一の見物である。冬組の内で網にかかった魚は、一番銛でも一々には褒美はない。2、3度も重なれば褒美がある。冬組の内でも網から外れた魚を突き留めれば褒美がある。 春組になっては突きを専らにするゆえ、網にかからずに突き留めれば一番から四番船まで褒美を得させるのである。春は鯨が盛んで群れ立つものにも恐れず、網にかかりにくいゆえ、突きを専らにするのである。万銛は残らず突くこともある。また魚盛りには後から追々来るゆえ、惜しんで魚の様子次第で5、6本あるいは10本ばかり突いて、直ちに剣で切るのである。万銛、羽矢銛、剣は皆軟鉄である。その余の刃物には少し刃金を交える。しかし小切包丁は軟鉄である。不断に研ぐゆえである。 【下段】 **万銛込み全図(よろずもりこみぜんず)** 込みを縄で仮に結び付ける。わらを結び添えたのは締まりをよくするためである。柄は椎の丸木で長さ8尺ある。鯨を突いて引きに任せ、結び付けた縄は切れて柄は流れ捨てる。身は突いたまま曲がり込み、株にかかって抜けることはない。万銛に付ける綱は、初めに根麻12尋、次に加賀麻24尋、次に白瀬24尋、合わせて60尋を付ける。