翻刻
【右丁】
水を与て功あるべく旦は菜汁をも冷して与ふべ
きもの也とこれ亦冷水の生を養ふことを証するに
たれり旦これにて考れば丸散の類も水にて呑くたす
べく熱湯をも冷して用べきものか何ぞ敢て熱物
を飲することをせんや
一冷食して冬近く火にあたることなかれ厚着する
ことなかれ老人と蜼共湯婆を用ることなかれかつ?
かしらをおしつゝむことなかれ
【左丁】
一当世の人の如きは胎中よりして火熟調茹の温食にそだ
てられて臓腑は綿の如く筋骨しまらす内こえ皮膚
うるはしく素より非?力にして英雄の気性なし然共
幸にして今四海静謐の御世にあひ昇平の恩沢
に浴して未た其弊を知らす猶美味をたしみ酒
肴に長じしきりに肥脂をかもし淫慾をうごかし
生をちゞめ弱をかさぬ民悉く懶惰(ライタ|直ノウシヨコタルモ)の風と成
武士もおのづから弱に流て忠信の志し立かたし