翻刻
する心あるに地夷の流言する処初島の夷奥地に入時
ハ往時より交易の諸品を貸置し続の為に質と
なし奥地の夷是を捕らんといたしなと聞及ひれは
去年山丹夷の狼藉を思ひ出し従夷等悉く恐怖し
更に従ひ行へしといふ者なし故に六夷の内悍骨な
る者一人を残し余は悉く帰り去しめ漸にして
地夷五人を雇ひ舟を出して四月九日ノテトの崎に
至りしに海上猶凍合して船をやる事不能故に五月
七日迄此所に滞留せしにウシヨロよりの傭夷また是より
奥地に入事を憚りける故此所にして舟た一夷を傭
先駈の者となしけれは後は皆漸に心を安ふし船を出す
へきも及ひ山旦船一艘を借て(山旦船の図前偏に出す
コルデツケの送る所なり是ゟ奥地ハ湖頗多くして
初島歌弱の船を以て進退する事あたはす
故に地夷の用る所上且船を借るといふ)同八日此所を発し同
十日イクタマーに至りしに従夷亦行事を恐るゝに依て
止事を得す地夷壱人を傭ふてまた先ン導となし
同十二日此所を発し其日ナニヲーに至つきぬ此ところ
北島極北の地にして夷家わつかに五六屋ある処
なりノテトより此所に至ルの間嶋と素韃地の
相対せる廻海にして潮水悉く南に流れ其間瀬
路ありといへとも波涛激沸の愁も少し小軟の夷船