翻刻
なれとも進退さまて難からす此所よりして北地は
北海漸々にひらけ潮水悉く北に潅き怒情大に徴す
れハ船をやる事かなはすさらハ山を越て東岸に出ん
といへは従夷従ひ行事をかえんせす已事を得す
して同十七日船を返し同十九日終にノテトに帰り
至りぬ貯糧既ニ尽なんとすれハ心を用ひて米飯をくら
わす大抵魚肉草根木実のみ食し其精心の不堪に至て
終に一握り二握りの米粥なとすゝり何卒して此嶋の
周廻を極め尽さんといろ〳〵といへとも東岸ハ大洋を
かけて覆没の然多けれハ従夷船をやとも又従ひ行へ
しと云者なけれハ如何ともすへき術なく此上ハ我一人
山を越へ谷を渡りて東岸に至るへしと覚悟し泣
夷ハ悉くウシヨロに帰し初より従ふ所の初島夷一人
を残し置て此所に滞留し奥地の事とも地夷にたよ
りて質問せしにロシヤの経界も此島を去る事をから
す時〳〵其属夷等船に乗して燧巧の火器を持しヲニ
ヲーの海上に遊猟する事少からすと聞けれハ猶更ニ
其経界の詳を極さらんも云かいなき事と思ひ幾年
此所にありとも是非其経界を極へしと決し終に
夫家に寓居し其業も助け漁猟をなし木も樵り網を