琉球・沖縄の世界を翻刻する

コレクション: 琉球大学所蔵 琉球・沖縄関係資料 vol. 1

琉球談 - 翻刻

琉球談 - ページ 37

ページ: 37

翻刻

を失ひ。  まかうさまに踏迷(ふみまよ)ふ程に。次第に 昏黒(くらやみ)になりてあいろも分ず。小竹を折て杖 となし。其所(そこ)に此所(こゝ)にとたどりしが。ほのかに 火影の見えければ。松寿そゞろに嬉しくて。 火影を便りに路をとり。辛(から)うして其家に 至り。一ち夜の宿(やと)を求めける。此家の主は狩人(かりうと) にて。一人の娘を持てり。山家には生立(おいたて)とも。天 性の嬌態(きやうたい)あやしきまてにあてやkやかなり。年わつ うに十六歳。此夜父は猟に出。只一人留主居して ありけるが。門に人のおとなひして。知ぬ山路に さまよひたる者にて侍らふ.情に御宿たまはり たしと.いふ跡声もかきくれたり.娘いたはしく は思ひけれども.折ふし父のるす留主といひ.心一ッに 定めかねしが.まだいはけなき人といひ.殊さら談 したる人もなければ.さまでに父のとかめもあらじ と.門の戸開きて庵にともなひ.彼是いたはり もてなしが.松寿が姿のいつくしに心とき めき.事に触(ふれ)て挑(いどみ)けれども.松寿もとより物堅(ものがた) き生れにて.いさゝかも にけひかず.睡(ねむ)りもやらず 座し居たり.娘おもひにせまりてや.ひし〳〵と