翻刻!江戸の医療と養生

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救急撮要 - 翻刻

救急撮要 - ページ 32

ページ: 32

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かならず毒(どく)を誘(さそひ)いだし。膿(うみ)となして 治するやうにすべしよ【よは白抜き文字】便毒(よこね)発(はつ)せん とするに。痛(いたみ)甚しくとも。強(しひ)て歩行(ほこう) して。速(すみやか)に膿(うみ)潰(つひえ)んことをもとむべし。 いまだ膿(うま)ざるに。鍼(はり)などすべからず。毒 のこりて後の害(がい)となればなり。この 処(ところ)にてよく膿(うみ)熟(じゆく)すれば。後の患(うれひ)を 免(まぬか)るゝなり。旅舎(やどや)に宿(とまり)たらば。浴後(ゆあがり)に。 白芥子末(からしのこ)を布(ぬの)につゝみ熱湯(あつきゆ)にしぼ りて。夕ごとによく罨熨(むしあたゝむ)べし。膿潰(うま)ざ る以前に。便毒(べんどく)下しの薬などといふ ものを。決(けつ)して服(のむ)べからず。軽粉(けいふん)などの 入たる剤(くすり)も。膿(うみ)を催(もよふ)さんとするとき には。用て害(がい)あり。故に家に帰(かへり)たら ば。巧者(こうしや)なる毉師(いし)に委(ゆだね)て。後(のちの)害(がい)を のこさぬやうに治をうくべし。膿(うま)ん とする勢(いきほひ)あるときは。必 妄意(みだり)なる ことをせず。自然(しぜん)に任(まか)せたるがよし。 故に卒爾(そつし)に薬方は記(しるさ)ざるなり ▲礜石(よせき)の毒に中(あた)りたるも。はやく油を 服(のむ)ときには。その毒を抱摂(つゝみおさへ)て。死にいた ることなきは。前に既(すで)にいふがごとく。桃仁(たうにん)の 泥(すりたる)を服(のま)すれば。よく火薬の毒焔(どくえん)を解(げ) するといふも。その旨(むね)はおなじことなり た【たは白抜き文字】煙草(たばこ)に酔(ゑひ)たるには醋(す)を服(のむ)べし。又 は甘草をせんじて用るもよし▲煙草(たばこ) の烟(けぶり)にむせてくるしむには。萊菔(だいこん)の しぼり汁をのむべし▲章魚(たこ)を喫(くらひ)て 毒にあたりたるには。鹿角菜(ふのり)を熱湯(にえゆ)の 中ヘいれ解(とか)してのち。滓(かす)をこして服(のむ)べ し▲竹筍(たけのこ)を多くくらひて。毒にあ たりたるには。生姜を多く喫(くふ)か。又は 汁をしぼり。砂糖(さたう)をあはせ。湯に 点(てん)じて用ふるかすべし。海帯(あらめ)の煎(せん)じ 汁。鹿角菜(ふのり)の汁。および蕎麦殻(そばのから)の せんじ汁も。よく竹筍(たけのこ)の毒を解(げ)す物 なり。苦痛(くつう)甚しきには。胡麻(ごま)の油を 服(のむ)べしそ【そは白抜き文字】卒(そつ)中風は。厥(けつ)といふ病(やまひ)の類(るゐ)

現代語訳

必ず毒を誘い出し、膿となして治すようにすべきである。横根(便毒)が発症しようとする時に、痛みが甚だしくても、無理に歩行して、速やかに膿が潰れることを求めるべきである。まだ膿んでいないのに、針などをしてはならない。毒が残って後の害となるからである。この段階でよく膿が熟すれば、後の患いを免れるのである。旅館に宿泊したならば、入浴後に白芥子末を布に包み熱湯に絞って、夕方ごとによく湿布で温めるべきである。膿が潰れる以前に、便毒下しの薬などというものを、決して服用してはならない。軽粉などの入った薬も、膿を催そうとする時には、用いて害がある。故に家に帰ったならば、優秀な医師に委ねて、後の害を残さないように治療を受けるべきである。膿もうとする勢いがある時は、必ずみだりなことをせず、自然に任せるのがよい。故に軽率に薬方は記さないのである。 ▲礜石の毒に中毒した場合も、早く油を服用する時には、その毒を包み込んで抑えて、死に至ることがないのは、前に既に言う通りである。桃仁の泥(すりつぶしたもの)を服用すれば、よく火薬の毒炎を解毒するというのも、その趣旨は同じことである。 ▲煙草に酔った場合には酢を服用すべきである。または甘草を煎じて用いるのもよい。 ▲煙草の煙にむせて苦しむ場合には、大根の絞り汁を飲むべきである。 ▲蛸を食べて毒にあたった場合には、ふのりを熱湯の中へ入れて溶かした後、滓を濾して服用すべきである。 ▲竹の子を多く食べて毒にあたった場合には、生姜を多く食べるか、または汁を絞り、砂糖を合わせ、湯に点じて用いるかすべきである。あらめの煎じ汁、ふのりの汁、および蕎麦殻の煎じ汁も、よく竹の子の毒を解毒するものである。苦痛が甚だしい場合には、胡麻の油を服用すべきである。 ▲卒中風は、厥という病気の類である。

英語訳

One must always draw out the poison and let it become pus to cure it. When a bubo (venereal swelling) is about to develop, even if the pain is severe, one should force oneself to walk to quickly encourage the pus to rupture. One must not use needles while it has not yet suppurated, because the poison will remain and cause later harm. If the pus matures well at this stage, one can avoid future suffering. If staying at an inn, after bathing, wrap white mustard seed powder in cloth, squeeze it in hot water, and apply it as a warm compress every evening. Before the pus ruptures, one must absolutely not take medicines called "bubo purging drugs." Medicines containing calomel are also harmful when used to encourage suppuration. Therefore, when returning home, one should entrust treatment to a skilled physician to receive treatment that leaves no future harm. When there is momentum for suppuration, one must not do anything rash and should leave it to nature. Therefore, I do not record prescriptions rashly. ▲For arsenic poisoning as well, if one takes oil early, it will encapsulate and suppress the poison so that it does not lead to death, as previously stated. That peach kernel paste (ground) can neutralize the toxic flames of gunpowder is based on the same principle. ▲For tobacco intoxication, one should take vinegar. Alternatively, decocting licorice is also good. ▲For suffering from choking on tobacco smoke, one should drink pressed radish juice. ▲For poisoning from eating octopus, put funori seaweed into hot water to dissolve it, then strain out the residue and drink it. ▲For poisoning from eating too many bamboo shoots, one should either eat much ginger, or squeeze its juice, mix it with sugar, and dissolve it in hot water for use. Decocted arame seaweed juice, funori juice, and buckwheat hull decoction also neutralize bamboo shoot poison well. For severe pain, one should take sesame oil. ▲Sudden apoplexy is a type of disease called "reversal."