翻刻!江戸の医療と養生

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救急撮要 - 翻刻

救急撮要 - ページ 47

ページ: 47

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▲咽(のんど)へ粢(もち)などのかゝりて。いかにすれども 下りかぬることあるを。扇(あふぎ)のほねを紙(かみ)に つゝみて。つきいれよといふことをいへど。これは いたづらに咽(のんど)をいためて効(こう)なきこと多き もの也。乾芋梗(いもがら)にておし下せといふは。 扇(あふぎ)のほねにはまさりたりとおもはる れど。それらよりも油をのみて滑(すべら)せて 下すにまさりたることはあるべからず。 これらにはわづか一二勺をのみて効を うるなり。鹿角菜(ふのり)を熱湯(あつきゆ)にもみて 滓(かす)をしぼりすてたるにても。団餅(たんご) 粢(もち)などの咽にかゝりたるは下るなり。 かゝることはたゞ速(すみやか)に行(おこな)ふをよしとす れば。この意(こゝろ)を得(え)てのちは。時に応(おう)じ ての裁酌(さりやく)あるべきことなり▲上衝(のぼせ)つよ く肩強(かたはり)。眩運(めまひ)。頭痛(づつう)などして。旅行(りよこう)に 艱(なやむ)ことあり。大 便(べん)通(つう)じなきより起(おこる)と しらば。下 剤(ざい)を用て下したるがよし。 されどあまりに下しすぐれば。心下 却(かへつ)てつかへ。上衝(のぼせ)のつのることあるもの也。 其時は。黄連(わうれん)。胡黄連(こわうれん)。熊膽(くまのゐ)。猪膽(ちよたん)。牛膽(ぎうたん) などまたは黄蘗(わうばく)皮を煎(せん)じつめたる。 陀羅助(だらすけ)などやうの。味苦(あぢはひにが)き物を用れば。 痞(つかへ)はいゆるなり。もし上衝(のぼせ)つよく。卒(にはか)に 昏冐(うつとうとなり)失気(きをうしなは)んとせば。はやく冷(ひや)水一 盃(ぱい) を一 息(いき)にのむべし。むかし日本武尊(やまとたけのみこと)が。 近江(あふみ)の膽吹(いぶき)山にて。雨をしのぎ霧(きり)をお かして。山を陟(こえ)ゆきたまひしとき。山の 瘴気(あしきき)にあたりたまひ。うつとりと酔(よへ) るがごとくになり給ひし時。麓(ふもと)の清(し) 水を飲(のみ)て覚(さめ)たまひしといふは。水の 効(こう)あるがゆゑなり。婦人(をんな)の児(こ)を産(うみ) おとすと。そのまゝに冷水一 盌(ぱい)をのめば。 昏眩(ひきつけ)て死(し)ぬる患(うれひ)決(けつ)してあること なきものゆゑ。賀川家には黒薬と いふて。麻(あさ)の嫩苗(わかなへ)を焼(やき)たるを。胞衣(のちざん)の いまだ下(おり)ぬうちに。冷水にて服(のま)するは。 麻(あさ)の苗(なへ)に効あるにはあらで。水に効

現代語訳

▲咽に餅などがかかって、どうしても下りないことがあるのを、扇の骨を紙に包んで突き入れよということを言うが、これはいたずらに咽を傷めて効果のないことが多いものである。乾燥した芋茎で押し下せというのは、扇の骨よりは優れていると思われるが、それらよりも油を飲んで滑らせて下すことに勝るものはないであろう。これらにはわずか一二勺を飲んで効果を得るのである。鹿角菜を熱湯で揉んで滓を絞り捨てたものでも、団子や餅などが咽にかかったものは下るのである。こうしたことはただ速やかに行うのがよいとすれば、この心得を得た後は、時に応じての判断があるべきことである。 ▲のぼせが強く肩が張り、めまい、頭痛などして、旅行に苦しむことがある。大便が通じないことから起こると分かれば、下剤を用いて下すのがよい。しかしあまりに下しすぎれば、心下が却ってつかえて、のぼせが募ることがあるものである。その時は、黄連、胡黄連、熊胆、猪胆、牛胆などまたは黄柏皮を煎じ詰めた、陀羅助などのような、味の苦いものを用いれば、つかえは治るのである。 もしのぼせが強く、急に意識が朦朧として気を失いそうになれば、早く冷水一杯を一息に飲むべきである。昔日本武尊が、近江の伊吹山で雨をしのぎ霧を犯して山を越えて行かれた時、山の瘴気に当たられ、うっとりと酔ったようになられた時、麓の清水を飲んで覚められたというのは、水の効果があるからである。 婦人が子を産み落とすと、そのまま冷水一杯を飲めば、昏厥して死ぬる患いは決してないものゆえ、賀川家では黒薬といって、麻の若苗を焼いたものを、胞衣がまだ下りないうちに、冷水で服用するのは、麻の苗に効果があるのではなくて、水に効果が

英語訳

▲When rice cakes and such get stuck in the throat and will not go down no matter what, people say to wrap a fan bone in paper and push it in, but this often just injures the throat uselessly without effect. Using dried taro stems to push it down seems better than fan bones, but nothing surpasses drinking oil to lubricate and make it slide down. For these cases, drinking just one or two shaku achieves the effect. Even with funori seaweed kneaded in hot water with the dregs squeezed out and discarded, dumplings or rice cakes stuck in the throat will go down. Since it is best to act quickly in such matters, after understanding this principle, one should make judgments according to the circumstances. ▲When there is strong blood rushing to the head with stiff shoulders, dizziness, headaches, etc., causing suffering during travel, if one knows this arises from constipation, it is good to use purgatives for bowel movement. However, if one purges too much, the epigastrium becomes blocked instead and the blood rushing to the head increases. At such times, using bitter-tasting things like coptis, picrorhiza, bear bile, pig bile, cow bile, or phellodendron bark decocted and concentrated, or darasuke and similar preparations, will cure the blockage. If the blood rushing to the head is strong and one suddenly becomes confused and about to lose consciousness, one should quickly drink a cup of cold water in one breath. Long ago, when Prince Yamato Takeru crossed Mount Ibuki in Omi, enduring rain and mist, he was affected by the mountain's miasma and became dazed as if intoxicated. When he drank the clear water at the foot of the mountain and recovered, this was because of water's effectiveness. When women give birth and immediately drink a cup of cold water, there is absolutely no risk of fainting and dying. Therefore, the Kagawa school has a "black medicine" - burned young hemp sprouts taken with cold water before the placenta descends - which works not because the hemp sprouts are effective, but because the water is effective