翻刻!江戸の医療と養生

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救急撮要 - 翻刻

救急撮要 - ページ 60

ページ: 60

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らず膿(うみ)を醸(かもす)ゆゑに。よくとり出したる あとへ紙條(こより)か発燭(つけぎ)へ油をぬりたるに火を 点(つけ)て。油を創(きず)へたらしこみ。その上より粉(とうの) 錫(つち)【注②】を蝋(らう)と油にてねりたるをつけおくべし。 生鶏卵(なまたまご)を油に和(ねり)たるをつくるも又よし こ【こは白抜文字】重舌(こじた)は。舌(した)の下に舌を重(かさ)ねたるが 如くに腫(はれ)出して。漸(しだい)に延(のび)ゆく也。この中 には粘稠(ねばり)たる水に少し血を交(まじへ)て。淡紅(うすもゝ) 色(いろ)なる液(しる)が瀦(たまり)てあるもの也。鈹鍼(はばり)なく ば。小刀やうのものにて。皮(かは)を裂(さき)て其水 をとれば。そのまゝに愈(いゆ)るなり。口中に附薬 などは不便利(ふべんり)なるものなれば。それ迄 にもおよはねど。硼砂(ぼうしや)二三分ばかりに。 枯礬(やきみやうばん)五六 厘(りん)をくはへたる細末をつけ たるもよし。鉛糖(えんたう)の末もよし▲帯下(こしけ)は。 婦人の病なり。白き粘稠液(ねばりたるしる)が通ずる也。 これに黄色(きいろ)なる臭気(にほひ)ある液(しる)を交(まじ) 下すものは。男子の黴毒(ばいどく)淋(りん)を患(うれふ)る者(もの)【注①】 と交接(まじはり)て。黴毒(ばいどく)を伝染(うつ)され。子宮(こつほ)の口(くち)に 瘡(かさ)を生したる膿(うみ)をまじへて出すもの なれば。尋常(よのつね)の治法にては愈(いえ)かたし。【注①】 いづれにもあれ。旅(りよ)中にてこの病が発れ は。歩行(あゆむ)に艱(なやむ)もの也その時は。蛇床子(しやじやうし)。小 茴(うい) 香(きやう)。苦薏花(くよくのはな)の三味を各二三匁ほどあつ き湯に浸(ひた)したるにて。毎夕 熨(むし)洗(あらふ)べし。 塩(しほ)気をへらし。膏梁膩味(うますぎあぶらつよきもの)をとほざ け。もし大麦。赤小豆などをくはるゝな らば。それを用ひ。内服剤(ないやく)は。後のす【すの横に長四角】の部 水(すい) 種(しゆ)の條(くだり)に出せる。三輪神庫(みわしんこ)の剤(ざい)を用 ひてよし。すべて黴毒(ばいどく)より来(きたる)ものには あらで。尋常(よのつね)の帯下(こしけ)ならば。小 便(べん)通利 の剤(ざい)を用れば。愈(いゆ)ること速(すみやか)なるものなり。 これに小 便(べん)淋瀝(りんれき)をかねて。尿口(すゞぐち)に痛(いたみ)を おほゆるものは。桃膠(もゝのやに)二匁に。甘草七八分 をあはせせんじて用るか。又は胡桃肉(くるみ) を研(すり)。沙糖(さたう)をくはへ。あつき湯にとかして用 るもよし。または。大麦を炒(いり)たるに。甘草 を多く入。煎じて用るもよし。▲凍死(こゞえしに) 【注① 虫損部は国会図書館所蔵本を参照 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536777/58】 【注② 「唐の土」=炭酸鉛を水で煮沸したり硫酸鉛や塩化鉛を炭酸ナトリウムの水溶液で煮沸したりして得られる白色粉末。鉛白。『書言字考節用集(一七一七)』に「粉錫 タウノツチ 宮粉。解錫。並同 鉛華 同 [文選註] 白粉也」とあり。ちなみに「鉛白、宮粉、解錫、鉛華、」はみな「おしろい」のことです。】

現代語訳

らず膿を生じるゆえに、よく取り出した後へ紙縒(こより)か付け木に油を塗ったものに火を点けて、油を傷へ垂らし込み、その上から鉛白を蝋と油で練ったものを付けておくべきである。生卵を油に和えたものを作るのもまたよい。 ▲重舌は、舌の下に舌を重ねたように腫れ出して、次第に延びてゆくものである。この中には粘りのある水に少し血を交じえて、淡紅色の液が溜まっているものである。医療用針がなければ、小刀のようなもので皮を裂いてその水を取れば、そのまま治るのである。口中に薬を付けることなどは不便なものであるから、そこまでする必要もないが、硼砂二三分ほどに、焼きミョウバン五六厘を加えた細末を付けるのもよい。鉛糖の末もよい。 ▲帯下は、婦人の病である。白い粘りのある液が出るのである。これに黄色い臭気のある液を交じえて下すものは、男子の梅毒・淋病を患う者と交わって、梅毒を伝染され、子宮の口に瘡を生じた膿を交じえて出すものであるから、普通の治療法では治りがたい。いずれにせよ、旅中にこの病が発すれば、歩行に苦しむものである。その時は、蛇床子、小茴香、苦薏花の三味を各二三匁ほど熱い湯に浸したもので、毎夕蒸し洗いすべきである。塩気を減らし、美味で脂っこいものを遠ざけ、もし大麦、赤小豆などを食べられるならば、それを用い、内服剤は、後の水腫の条に出した三輪神庫の剤を用いてよい。すべて梅毒から来るものではなく、普通の帯下ならば、小便通利の剤を用いれば、治ることは速やかなものである。これに小便の淋瀝を兼ねて、尿道口に痛みを覚えるものは、桃膠二匁に甘草七八分を合わせて煎じて用いるか、または胡桃肉をすり、砂糖を加え、熱い湯に溶かして用いるのもよい。または、大麦を炒ったものに甘草を多く入れ、煎じて用いるのもよい。 ▲凍死

英語訳

If even a little remains, it will inevitably cause suppuration, so after thoroughly removing it, one should light a paper twist or wooden splint coated with oil, drip oil into the wound, and then apply a mixture of lead white kneaded with wax and oil on top. Making a mixture of raw egg and oil is also good. ▲Double tongue is a condition where swelling appears under the tongue as if another tongue were layered there, gradually extending. Inside this is a pale pink liquid containing viscous water mixed with a little blood. If there is no medical lancet, one can use a small knife to cut the skin and drain the fluid, which will heal on its own. Since applying medicine inside the mouth is inconvenient, it need not go that far, but applying a fine powder of about 2-3 bu of borax mixed with 5-6 rin of calcined alum is also good. Powdered lead sugar is also effective. ▲Vaginal discharge is a women's disease. White viscous fluid flows out. When this is mixed with yellow, foul-smelling fluid, it comes from women who have had intercourse with men suffering from syphilis and gonorrhea, contracted syphilis, and developed sores at the cervix, causing pus to mix with the discharge. Therefore, it is difficult to cure with ordinary treatment methods. In any case, when this disease manifests during travel, it causes difficulty in walking. At such times, one should steam-wash every evening with hot water in which about 2-3 monme each of cnidium seed, fennel, and Job's tears flowers have been soaked. Reduce salt intake, avoid rich and oily foods, and if barley and red beans are available, use those. For internal medicine, the Miwa Shinko preparation mentioned in the later section on edema can be used. If it is ordinary vaginal discharge not caused by syphilis, using diuretic medicines will provide swift recovery. For cases accompanied by urinary dribbling and pain at the urethral opening, one can decoct 2 monme of peach gum with 7-8 bu of licorice, or grind walnut meat, add sugar, and dissolve in hot water for use. Alternatively, roasting barley with plenty of licorice and decocting it is also good. ▲Freezing to death