翻刻!江戸の医療と養生

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救急撮要 - 翻刻

救急撮要 - ページ 64

ページ: 64

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のみを服(のま)せて。必(かならず)解(げ)するなり。売薬(ばいやく)の 一 粒(りう)金丹。粒甲丹(りうかふたん)。金 匱救命丸(ききうめいぐわん)。また廷利(てり) 也迦(やか)の類(るゐ)は。この物を主として製(せい)せし 方なれば。その證(しよう)をも弁(わきまへ)ずして。妄(みだり)にこ れを用て毒に中ことも。また多ければ。素(しらう) 人(と)といへども。心得おきて。人を救(すくふ)へし。 吐薬を用て吐たるあとは。かならず一下 すべきことも。前にすでにいへるがごとく。 とりわけ阿片(あへん)の毒などを解(げ)するには。 劇(はげし)き下剤(げざい)がよければ。霍乱(くわくらん)の條(でう)に載(のせ)た る。備急円(ひきふゑん)の類(るゐ)を用たるがよし▲少陽(あか) 魚(えい)の尾(を)に毒あり。もし人これに触(ふる)れば。指(ゆび) を損(そこなふ)といへど。これは毒あるゆゑにはあらず。 此魚の尾(を)さきに。至(いたつ)て細(ほそ)き芒刺(のぎ)が逆(さかさま)に ありて。それが肉中へ螫(さし)入て痛(いたみ)をなして 腫(はる)る也。この故(ゆゑ)に漁人(りやうし)もこの尾(を)を多く切(きり) 断(たち)て輸(いたす)なり。これには鰔魚(さより)の皮(かは)を剥(はぎ)て よく纏(まとひ)おけば。速(すみやか)にいゆる。これ漁夫(りやうし)の 伝(つたふ)る所也さ【さは白抜文字】酒(さけ)に酔(ゑひ)て昏冐(うつとり)となり 人事(ひこと)の省(み)さかひなく。軈(やが)て気(き)を失(うしな)ひ て。卒中風(そつちうふう)の如くになることあり。これは 多くは癇證(かんしよう)か。または卒蕨(そつけつ)の萌(きざし)ある か。平常(へいぜい)に頭痛(づゝう)。昏眩(めまひ)なとあるものに 発(はつ)する證(しよう)にて。常(つね)の酩酊(めいてい)の甚しき ものなどと思ふて。そのまゝにおけば。必(かならず)死 ぬるものなれば。遄(すみやか)にこれを解(げ)すること をなすべし。まづ鳥の羽に燈油(あぶら)をしたゝ かにつけ。咽(のんど)をふかく探(さぐり)て吐(はき)を誘(さそふ)べし。 もしそれにて吐(はか)ずば。瓜蒂散(くわていさん)にても。何(なに) にても速(すみやか)に吐(はく)べきものを用て。快(こゝろよ)く吐(はか) すべし。肩(かた)項(うなじ)などへ。強(つよ)く壅塞(ふさがる)物なれ ば。雷震死(らいしんし)にいふがごとく。肩(かた)の肉(にく)を内 へ徹(とほる)やうに拈(ひねる)か。又は鍼(はり)を刺(さし)て。吸角(すいふくべ)を 以て吸(すは)するかするもよし。生気つきて のちは。硝石大円(せうせきだいゑん)。調胃承気湯(てうゐじようきとう)などを 用て下すがよし。方は前に挙(あげ)たるを見 るべし。もし泥飲(どろのごとくよひ)て。宿酒(しゆくしゆ)の残(のこ)れるもの ありと思はゞ。雌黄(しわう)二分ばかりを用るか。

現代語訳

のみを服用させて、必ず解毒するのである。売薬の一粒金丹、粒甲丹、金匱救命丸、また廷利也迦の類は、この物(阿片)を主として製造した処方であるから、その症状をも理解せずして、みだりにこれを用いて毒に中ることも、また多いので、素人といえども、心得ておいて、人を救うべきである。 吐薬を用いて吐かせた後は、必ず一度下剤を用いるべきことも、前にすでに言ったとおり、とりわけ阿片の毒などを解毒するには、激しい下剤がよいので、霍乱の条に載せた備急円の類を用いるのがよい。 ▲エイの尾に毒があり、もし人がこれに触れば、指を損なうと言うが、これは毒があるゆえではない。この魚の尾の先に、極めて細い逆さ向きの棘があって、それが肉中に刺さって痛みを起こして腫れるのである。この故に漁師もこの尾を多く切断して出荷するのである。これにはサヨリの皮を剥いでよく巻いておけば、速やかに治る。これは漁夫の伝えるところである。 ▲酒に酔って意識朦朧となり、人事の分別もなく、やがて気を失って卒中風のようになることがある。これは多くは癇症か、または卒厥の兆しがあるか、平常に頭痛、めまいなどがある者に発する症状で、普通の酩酊の甚だしいものなどと思って、そのままにしておけば、必ず死ぬものであるから、速やかにこれを解毒することをなすべきである。 まず鳥の羽に灯油をたっぷりとつけ、咽を深く探って嘔吐を誘うべきである。もしそれで吐かなければ、瓜蒂散でも、何でも速やかに吐くべきものを用いて、気持ちよく吐かせるべきである。 肩や項などに強く閉塞する物であれば、雷震死に言うように、肩の肉を内へ通るように捻るか、または鍼を刺して吸角で吸うかするのもよい。生気がついた後は、硝石大円、調胃承気湯などを用いて下すのがよい。処方は前に挙げたものを見るべきである。もし泥のように酔って、宿酒の残っているものがあると思えば、雌黄二分ばかりを用いるか。

英語訳

should be administered alone, and it will certainly neutralize the poison. Patent medicines like Ichiryu Kintan, Ryukofutan, Kinki Kyumei-gan, and medicines of the Teri-yaka class are formulations made primarily with this substance (opium), so even without understanding the symptoms, people often carelessly use these and get poisoned. Therefore, even laypeople should understand this and be able to rescue others. After using emetic medicines to induce vomiting, one must always follow with a purgative, as previously mentioned. Particularly for neutralizing opium poisoning, strong purgatives are good, so it is best to use medicines like Bikyu-en listed in the cholera section. ▲Stingrays have poison in their tails, and if people touch them, they are said to injure their fingers, but this is not because of poison. At the tip of this fish's tail, there are extremely fine barbs pointing backward, which pierce into the flesh causing pain and swelling. For this reason, fishermen often cut off these tails before shipping. For this, peeling off the skin of a halfbeak fish and wrapping it well will heal it quickly. This is what fishermen traditionally know. ▲When intoxicated with alcohol, one may become unconscious, lose all human sensibility, soon lose consciousness and become like apoplexy. This is often a convulsive disorder or a sign of sudden fainting, a condition that develops in those who usually have headaches, dizziness, etc. If one thinks this is just severe ordinary intoxication and leaves it alone, the person will certainly die, so one should quickly work to neutralize this. First, soak a bird's feather thoroughly with lamp oil and probe deep into the throat to induce vomiting. If that doesn't cause vomiting, use Katei-san or anything that can quickly induce vomiting to make them vomit comfortably. Since there is strong obstruction in the shoulders and neck area, as mentioned in lightning strike death, it is good to twist the shoulder muscles as if penetrating inward, or to insert needles and suction with cupping instruments. After vital energy returns, it is good to purge using Shoseki Dai-en, Choi Joki-to, etc. Refer to the prescriptions mentioned earlier. If one thinks there is muddy intoxication with residual alcohol remaining, use about two parts of orpiment.