翻刻!江戸の医療と養生

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救急撮要 - 翻刻

救急撮要 - ページ 73

ページ: 73

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には。尽(こと〴〵)く其用意も成かぬれば。前に 出せる健(けん)中 散(さん)を熱湯(ねつとう)にかきたてゝ用て。 汗をとるべし。汗を発(とる)には。米(こめ)の粥(かゆ)を稀(うすく) して用るか。温飩(うんどん)。羮蕎麪(ぶつかけそば)。鶏卵湯。酒(さけ) 客(のみ)は生姜味醤の酒などを飲(のみ)てよし。 我邦(わがくに)のむかし風ひきたるには。必 腰湯(こしゆ)を つかひて汗を発(とる)ことをおしなへて行(おこなひ)て。 これをゆゝで【ゆゝでの横に長四角】といひしこと。古き物語に見 えたり。旅中にてなまなかなる薬を 用んよりは。此ゆゝで【ゆゝでの横に長四角】の法(はふ)を行ひて。汗を とることは。薬にもまさる効あるもの也。 柚(ゆづ)の皮。香橙皮(くねんぼのかは)。蜜柑(みかん)の皮などを煎じ て用るも。又よく汗を発するもの也。近 来の和蘭毉者(おらんだいしや)が。妄(みだり)に焮衝(きんしよう)といふこと を唱(となへ)て。傷寒(しようかん)最初(さいしよ)の必汗すべき病 者に。蜞(ひる)をつけ絡(らく)を刺(さし)などして血をと り。下剤を用て下しなどして。壊證(えしよう) にすることまゝ多し。雑病(ざつびやう)とちがひ傷(しよう) 寒(かん)。時疫(じえき)の病は。汗すべきものを下し。 下すべきものに参附(じんぷ)を用ひ。参附(じんぷ)を 用べきものに。下剤をあたへなどすれば。 わづかに二三 貼(てふ)の薬にて人を殺(ころす)にい たる。怖(おそろ)しきものあれば。俗人(しろうと)にもその心 得あるべきことなり。况(まし)て旅(りよ)中にて。この 病に遇(あえ)ば。妄(みだり)なることをせんよりは。薬を 用ずして。その動静(なりゆき)を旁観(みたるかた)がよし。 すべて人の體(からだ)には。自然(しぜん)受用力(じゆようりき)といふ て。おのれと病を排除(はらひのぞく)ところの機関(はたらき) はあるものなればなり。この義(わけ)をよく おもふべし。▲白癜風(しろなまづ)には。青胡桃(あをぐるみ)を生 のまゝわさび擦(おろし)にておろしぬりつくれば。 膿(うみ)を醸(かもし)て愈(いゆ)るがゆゑに。毒の内攻(ないこう)する ことなし。あるひは。青胡桃(あをぐるみ)一个に巴豆(はづ)二ツ を研合(すりあは)せてつくるは。もつともよし ひ【ひは白抜文字】肥前瘡(ひぜんさう)は。そのむかし異国(いこく)人が。 肥前の州(くに)の長 崎(さき)にて。妓婦(ぎふ)に流伝(うつし) て。それよりはびこりたる一 種(しゆ)の毒(どく) なることは。足利(あしかゞ)時代に。黴毒(ばいどく)を

現代語訳

には、すべてその用意も整わないので、前に出した健中散を熱湯でかき立てて用いて、汗を取るべきである。汗を発するには、米の粥を薄くして用いるか、うどん、ぶっかけそば、鶏卵湯、酒飲みは生姜味噌の酒などを飲んでよい。我が国の昔、風邪を引いた時には、必ず腰湯(半身浴)を用いて汗を発することを一般的に行って、これを「ゆゆで」と言ったことが、古い物語に見えている。旅中で中途半端な薬を用いるよりは、この「ゆゆで」の方法を行って汗を取ることは、薬にも勝る効果があるものである。柚子の皮、香橙皮(こうとうひ)、蜜柑の皮などを煎じて用いるのも、また良く汗を発するものである。 近来の蘭方医が、みだりに焮衝(炎症)ということを唱えて、傷寒最初の必ず汗を出すべき病者に、蛭を付け絡脈を刺すなどして血を取り、下剤を用いて下すなどして、悪化させることがしばしば多い。雑病と違い、傷寒・時疫の病は、汗を出すべきものを下し、下すべきものに参附を用い、参附を用いるべきものに下剤を与えるなどすれば、わずか二三服の薬で人を殺すに至る。恐ろしいものがあるので、素人にもその心得があるべきことである。ましてや旅中でこの病に遭えば、でたらめなことをするよりは、薬を用いずに、その成り行きを傍観する方が良い。すべて人の体には、自然受用力といって、自ら病を排除するところの機能があるものだからである。この理をよく思うべきである。 ▲白癜風(しろなまず)には、青胡桃を生のままわさび卸しでおろして塗り付ければ、膿を生じて治るゆえに、毒の内攻することはない。あるいは、青胡桃一個に巴豆二つを研ぎ合わせて付けるのが、最も良い。 肥前瘡は、その昔異国人が、肥前の国の長崎で、妓女に流伝して、それより蔓延した一種の毒であることは、足利時代に梅毒を

英語訳

complete preparations cannot be made, so one should use the previously mentioned Kenchū-san mixed with hot water to induce sweating. To induce sweating, one may use thin rice porridge, udon, bukkake soba, chicken egg soup, or for sake drinkers, sake with ginger and miso. In our country's past, when catching a cold, it was common practice to use hip baths to induce sweating, which was called "yuyude" as seen in old tales. While traveling, rather than using half-hearted medicines, performing this "yuyude" method to induce sweating is more effective than medicine. Decoctions of yuzu peel, bitter orange peel, or mandarin orange peel also effectively induce sweating. Recently, Dutch physicians have been recklessly advocating about "inflammation" (kinshō) and applying leeches, puncturing collateral vessels to draw blood, and using purgatives on patients with early-stage typhoid who should be made to sweat, often worsening their condition. Unlike miscellaneous diseases, in typhoid and seasonal epidemics, if you purge those who should sweat, use ginseng and aconite on those who should be purged, or give purgatives to those who need ginseng and aconite, you can kill a person with just two or three doses of medicine. This is frightening, so even laypeople should be aware of this. Especially when encountering this disease while traveling, rather than doing reckless things, it is better to avoid medicine and observe the natural course. This is because the human body has what is called "natural receptive power" - a mechanism to naturally eliminate disease. One should think well on this principle. ▲For vitiligo (white ringworm), grate fresh green walnuts with a wasabi grater and apply it, as it will generate pus and heal, preventing the poison from attacking internally. Alternatively, grinding together one green walnut with two croton seeds is most effective. Hizen-sō (syphilis) is a type of poison that foreigners transmitted to prostitutes in Nagasaki in Hizen province long ago, from which it spread. During the Ashikaga period, syphilis was...