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【右丁】
ては旋(やゝ)耗(へれ)は旋(やゝ)生(しやう)して固(まことに)覚(おほゆ)る所(ところ)なし中比(なかころ)衰(をとろゆ)るに及(をよひ)て
力(ちから)勝(たへ)さる事ある時(とき)は宿孼(しゆくけつ)【孽は俗字】殃(わさはゐ)を為(なし)て能(よく)禦(ふせぐ)事なしと
いへり是 酒(さけ)の血(ち)を耗(へら)し損(そん)ずるの説(せつ)なり明医(めいい)類案(るいあん)に
人(ひと)年(とし)六十(ろくしふ)を踰(こへ)好(このみ)て酒(さけ)を飲(のめ)は隔(かく)を病(やむ)酒(さけ)の性(せい)酷烈(こうれつ)血(ち)を
耗(へら)し気(き)を耗(へら)す事是より甚(はなはた)しきはなしといへり又
朱丹渓(しゆたんけい)の説(せつ)に隔症(かくしやう)は熱酒(ねつしゆ)を飲(のむ)の致(いたす)所(ところ)なり又 日(ひゝ)に■(ちん)【注】
刴(た)酒(しゆ)三盞(さんさん)を飲(のみ)て此症(このしやう)を致(いたす)といへり又 兪嘉言(ゆかけん)の説(せつ)
に滾酒(こんしゆ)を過飲(すこしのめ)は多(おほく)隔症(かくしやう)を為(なす)といへり滾酒(こんしゆ)とは熱酒(ねつしゆ)
なり此説(このせつ)は熱酒(ねつしゆ)を飲者(のむもの)のみ隔症(かくしやう)を為(なす)と云(いふ)に似(に)たれ
【左丁】
ども只(たゝ)熱酒(ねつしゆ)のみにも限(かきる)へからず冷熱(れいねつ)ともに過飲(すこしのむ)時(とき)は
皆(みな)此症(このしやう)を為(なす)と知(しる)へし或(あるひ)は飲(のま)ざる者(もの)も此症(このしやう)を致(いたす)事
有(あり)されど甚(はなはた)少(すくな)し是 亦(また)元来(くわんらい)血(ち)不足(ふそく)にて甚(はまはた)痩(やせ)たる者(もの)
事に因(より)て又 陰血(いんけつ)を耗散(かうさん)すれは此症(このしやう)為(なす)されは常(つね)に
かゝる事を能(よく)心得(こゝろえ)て保養(ほうやう)に志(こゝろざす)時(とき)は是等(これら)の酷症(こうしやう)を為(なす)
事なかるへし今(いま)此(この)論(ろん)ずる所(ところ)は人(ひと)皆(みな)知(しり)たる事にて新(あたらし)く
云(いひ)しらぶへき事にもあらざれは遼豕(りやうし)の嘲(あさけり)をいかゝは
すへき昔(むかし)遼東(りやうとう)と云(いふ)所(ところ)に豕(ふた)の頭(かしら)の白(しろ)き子(こ)を生(うみ)ける
を珍異物(めつらしきもの)なれは是を上(かみ)に献(けん)ずへしとて彼(かの)豕(ふた)を
【注 字面から推察するに「㓠」に見えるがこの字は音「テン」なので悩ましい。意は「欠ける。きず」。「た」の「刴」はきりきざむ意。「チンタ酒」とは普通「珍陀酒」と表記され、ぶどう酒のこと。】