翻刻!江戸の医療と養生

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酒説養生論 7巻 - 翻刻

酒説養生論 7巻 - ページ 139

ページ: 139

翻刻

蠱(こ)のことし公(こう)の曰(いはく)女(をんな)をは近(ちか)づくへからさるか医和(いくは) 対(こたへ)て是(これ)を節(せつ)にすといへり抱朴子(はうはくし)に飲食(いんしい)は生(せい)を 養(やしなふ)所(ところ)なり然(しか)れとも醉(ゑひ)て酒(さけ)を強(しゐ)飽(あい)て食(しよく)を強(しゆ)れは 疾(やまひ)を為(なし)て其身(そのみ)を害(かい)せざる事なし況(いはん)や色欲(しきよく)をや といへりされは色欲(しきよく)は深(ふか)く慎(つゝしみ)て其(その)過度(くはど)を戒(いましむ)へき なり扨(さて)色欲(しきよく)を除(のぞく)の外(ほか)甚(はなはた)腎(しん)を害(かい)する者(もの)は酒(さけ)に過(すき)た るはなし先(まづ)内経(たいきやう)に夫(それ)酒気(しゆき)盛(さかん)にして慓悍(ひやうかん)腎気(しんき) 日(ひゝに)衰(をとろへ)陽気(やうき)独(ひとり)勝(かつ)といへり酒(さけ)いかにして腎(しん)を害(かい)す るやと云(いふ)に又(また)経(きやう)に腎(しん)は至陰(しいん)なりと云(いひ)又(また)陰気(いんき)は 【左丁】 静(しつか)なれは神(しん)蔵(かくれ)躁(さはかし)けれは消亡(せうはう)すといへりされは腎(しん)は 陰中(いんちう)の至陰(しいん)にして精水(せいすい)又(また)陰(いん)なり彼(かの)精水(せいすい)の質(かたち)は 他(た)の血液(けつえき)に異(こと)にして其(その)凝(こり)濁(にごる)は至陰(しいん)の質(しつ)にし て甚(はなはた)生(しやう)じ難(かたき)事 知(しん)ぬへし能(よく)安静(あんせい)秘蔵(ひさう)するに あらされは是を生(しやう)ずる事 難(かた)し故(かるかゆへ)に薬物(やくふつ)も腎(しん) を補(をきなふ)は地黄(ちわう)山薬(さんやく)知母(ちも)黄栢(わうはく)陰寒(いんかん)収斂(しうれん)の味(み)なり 然(しか)るに酒(さけ)は純養(しゆんやう)大熱(たいねつ)なり大寒(たいかん)海(かい)を凝(こら)し唯(たゝ)酒(さけ) 氷(こほり)【ママ】ずといへり本草(ほんさう)に酒(さけ)の性(せい)は大(おほい)に能(よく)火(ひ)を助(たすく)一飲(いちいん) 咽(のと)に下(くたれ)は肺(はい)先(まづ)これを受(うく)肺(はい)賊邪(ぞくしや)を受(うけ)て腎水(しんすい)を

現代語訳

【右丁】 蠱の病のことである。公が言うには「女を近づけるべきではないか」と。医和は 答えて「これを節度にする」と言った。抱朴子に「飲食は生命を 養うところである。しかしながら、酔って酒を強いて飲み、満腹なのに食を強いて食べれば、 病気となってその身を害さないことはない。まして色欲においてをや」 と言っている。されば色欲は深く慎んで、その 過度を戒めるべきである。さて、色欲を除く他で、甚だしく腎を害するものは酒に過ぎた ものはない。まず内経に「それ酒気盛んにして慓悍なれば、腎気 日々に衰え、陽気独り勝つ」と言っている。酒はいかにして腎を害 するのかというと、また経に「腎は至陰なり」と言い、また「陰気は 【左丁】 静かなれば神蔵れ、躁がしければ消亡す」と言っている。されば腎は 陰中の至陰にして、精水もまた陰である。かの精水の性質は 他の血液と異なって、その凝り濁るのは至陰の性質にし て甚だ生じ難いことを知るべきである。よく安静に秘蔵するので なければ、これを生ずることは難しい。故に薬物も腎を 補うのは地黄・山薬・知母・黄柏といった陰寒収斂の味である。 しかるに酒は純陽大熱である。大寒の海を凝らしても、ただ酒だけは 凍らないと言われている。本草に「酒の性は大いによく火を助け、一たび飲んで 咽に下れば、肺がまずこれを受ける。肺が賊邪を受けて腎水を

英語訳

[Right page] This is the disease of Gu. The duke said, "Should women not be brought close?" Physician Yihe replied, "This should be done with moderation." In the Baopuzi it states: "Food and drink are what nourish life. However, if one forces drink when drunk and forces food when full, it invariably causes illness and harms the body. How much more so with sexual desire!" Therefore, sexual desire should be deeply restrained and its excess should be guarded against. Now, apart from sexual desire, nothing harms the kidneys more severely than alcohol. First, the Inner Classic states: "When alcohol qi is abundant and violent, kidney qi declines daily, and yang qi alone prevails." How does alcohol harm the kidneys? The Classic also says "the kidneys are of utmost yin," and "when yin qi is [Left page] still, the spirit is stored; when agitated, it dissipates." Therefore, the kidneys are the utmost yin within yin, and essence-water is also yin. The nature of that essence-water differs from other blood fluids, and its coagulation and turbidity are of the utmost yin quality, making it extremely difficult to generate. Unless it is well preserved in tranquil secrecy, it is difficult to produce. Therefore, medicinal substances that tonify the kidneys are of yin-cold and astringent flavors like rehmannia, dioscorea, anemarrhena, and phellodendron. However, alcohol is pure yang and greatly heating. Even when the great cold freezes the sea, only alcohol does not freeze. The Materia Medica states: "The nature of alcohol greatly assists fire. Once drunk and descending the throat, the lungs first receive it. When the lungs receive pathogenic influences, the kidney water