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コレクション: コレクション2

酒説養生論 7巻 - 翻刻

酒説養生論 7巻 - ページ 162

ページ: 162

翻刻

【右丁】 として常(つね)ならず自(みつから)云(いふ)初(はしめ)空中(くうちう)に五色(こしき)の物(もの)あり稍(やゝ) 近(ちかつけ)は変(へん)じて一人(いちにん)の美女(びしよ)となり地(ち)を去(さる)事 数丈(すちやう)亭(てい) 亭(てい)として立(たつ)を見(みる)といへり又(また)汪石山(わうせきさん)の説(せつ)に一人(いちにん)年(とし)三十(さんしふ) を踰(こへ)形(かたち)肥(こゑ)色(いろ)白(しろ)く酒(さけ)を飲(のみ)ける上(うへ)にて人(ひと)に辱(はつかしめ)られけれ は遂(つゐ)に心(しん)恙(かう)【「やう」の誤記ヵ】となり或(あるひ)は刀(かたな)を持(もち)或(あるひ)は垣(かき)を踰(こへ)髪(かみ)を被(かふり) て大(おほい)に叫(さけぶ)といへり又(また)朱丹渓(しゆたんけい)の外弟(くわいてい)一日(いちにち)酔飽(ゑひあき)て後(のち)乱(らん) 言(けん)妄語(まうこ)を為(なす)是を問(とへ)は其(その)亡兄(ばうけい)体(たい)に付(つき)て生前(しやうせん)の事 を云(いひ)て甚(はなはた)的(たゝし)是 邪(じや)にあらず魚肉(ぎよにく)と酒(さけ)と大(おほい)に過(すぎ)て 痰(たん)の致(いたす)所(ところ)なりとて塩湯(しほゆ)一(いつ)大碗(たいわん)を与(あたへ)て痰(たん)を吐(はく)事 【左丁】 一二升(いちにせう)一夜(いちや)睡(ねむり)て安(やす)しといへり儒門(しゆもん)事(し)親(しん)には酒(さけ)を嗜(たし[な]み) 発狂(はつきやう)して鬼(き)を見(みる)に死(し)する事 有(あり)といへり是 昔(むかし)より 酒(さけ)の狂症(きやうしやう)を致(いたせ)し例(ためし)なり今(いま)の世(よ)にもかくて狂症(きやうしやう)を 為者(なすもの)多(おほ)しかゝる人(ひと)は自(みつから)是を知(しり)て慎(つゝしむ)へきにもあらざれ は傍(そば)なる人(ひ[と])の能(よく)謀(はかり)て漫(みだり)に酒(さけ)を与(あたへ)ずして是を調(とゝのへ)て此(この) 凶症(きようしやう)を致(いたす)事なかるへし又(また)邪崇(しやすい)【ママ 「祟」の誤記】の症(しやう)あり是 邪悪(じやあく)の 気(き)崇(たゝり)【ママ 祟の誤記】を為(なす)なり古来(こらい)の説(せつ)に人(ひと)或(あるひ)は死(し)を弔(とむらひ)廟(ひやう)に入(いり)或(あるひ) は空屋(くうをく)人(ひと)なき所(ところ)山谷(さんこく)幽陰(ゆういん)の地(ち)に至(いたり)て物(もの)のために付(つか) るゝに因(より)て其(その)病症(ひやうしやう)顚狂(てんきやう)のことくなる事ありといへり

現代語訳

【右丁】 として常ではなく、自ら言うには「初めは空中に五色の物があり、やや近づくと変じて一人の美女となり、地を去ること数丈、亭々として立っているのを見る」と言った。また汪石山の説によると、一人の年三十を越え、体型は肥満で色白の者が、酒を飲んでいる最中に人に侮辱されたところ、ついに心を病むこととなり、あるいは刀を持ち、あるいは垣を越え、髪を振り乱して大声で叫ぶようになったという。また朱丹渓の義弟が、ある日酔って飽食した後、乱言妄語を発するようになった。これを問うと、その亡兄が体に憑いて生前のことを言うのだが、非常に的確である。これは邪霊によるものではなく、魚肉と酒を大いに過度に摂取したため痰が原因となったものだとして、塩湯一大碗を与えて痰を吐くこと 【左丁】 一二升、一夜眠って安らかになったという。『儒門事親』には「酒を嗜み発狂して鬼を見て死ぬことがある」と記されている。これは昔から酒の狂症を引き起こした例である。今の世にもこのようにして狂症を起こす者が多い。このような人は自らこれを知って慎むべきでもあるが、そうでなければ傍にいる人がよく配慮して、みだりに酒を与えずにこれを調整して、この凶症を引き起こすことがないようにすべきである。また邪祟の症がある。これは邪悪の気が祟りをなすものである。古来の説によると、人がある時は死者を弔い廟に入り、あるいは空き家や人なき所、山谷の幽暗な地に至って、物のために憑かれることによって、その病症が癲狂のようになることがあるという。

英語訳

【Right page】 and was not normal, saying of himself: "At first there was a five-colored object in the sky, and when it came somewhat closer, it transformed into a beautiful woman, standing gracefully several zhang above the ground." Also, according to Wang Shishan's account, there was a person over thirty years old, fat and pale in complexion, who while drinking was humiliated by someone, and consequently became mentally disturbed, sometimes wielding a sword, sometimes leaping over fences, disheveling his hair and shouting loudly. Also, Zhu Danxi's brother-in-law, after getting drunk and overeating one day, began speaking incoherently and nonsensically. When questioned about this, his deceased elder brother seemed to possess his body and spoke of things from when he was alive, and these were very accurate. This was not due to evil spirits, but was caused by excessive consumption of fish, meat, and alcohol that produced phlegm, so they gave him a large bowl of salt water and he vomited phlegm 【Left page】 amounting to one or two sho, slept through the night, and became peaceful. In "Rugmen Shiqin" it states that "there are those who enjoy alcohol, go mad, see demons, and die." These are examples from ancient times of alcohol-induced madness. In today's world as well, there are many who develop madness in this way. Such people should know this themselves and exercise restraint, but if they cannot, people around them should take good care not to give them alcohol carelessly, and should regulate this so as not to cause this terrible condition. There is also the condition of evil possession. This is when evil qi creates a curse. According to ancient theories, when people sometimes mourn the dead and enter temples, or go to empty houses, uninhabited places, or dark and shadowy places in mountains and valleys, they become possessed by spirits, causing their symptoms to become like madness.